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あぁ…その瞳が怖い


「捕まえたナナ」

ダンテはニヤリと笑ってそのままぎゅう、と彼女を抱きしめた
どうしていいかわからなかった
怒っているのではないか、と…だが今自分を抱きしめる腕はすごく優しいものだ

「だ、ダンテ……」
「ん?どうした?ナナ……」

これ以上先を聞くのが怖かった
どうしてここの学校に来たの?と出かかっているのに声が出ない
彼の反応が怖い、こうして抱きしめている彼が……
弟なのに家族なのに…一人の男として見ると怖い

「なんで俺がここの学校にいるか、だろ?」
「!」

ダンテの言葉にナナの体がビクリとなった
ナナの体を離して、彼女の顎をグイッと掴んで引き寄せた

「っ……!」
「俺の学力じゃここには来れない……って思ってたんだろ?」

ナナが彼から逃れようと顔を必死に動かすがビクともしない
それを見ていたダンテは更に強く引き寄せた

「あの時言っただろ?絶対に逃がさないって……」
「ダンテ……っ」

ナナは痛そうに顔を歪めながらもダンテを見る

「……私たちは姉弟なの…だからそういうのはいけない事なの……」
「そんなの知るかっ!!!」

ダンテが大声をあげて言った
ナナはまたも体をビクリとさせる

「俺はお前が欲しいんだ。姉とか家族とかそんなの関係ねぇ…お前は黙って俺の物になればいいんだよ」
「ダン……んぅっ!?」

説得をしようとしたナナの唇にダンテの唇が重なった
抵抗しようにもダンテに後頭部と腰を押さえつけられ、深く唇を重ねられていてできなかった

「んっ…は…ぁっ…」

一度唇が離れ、その隙に呼吸を整える
しかしほんの一瞬だった。呼吸を整えるとダンテはナナの唇を舐め、また深く口付けてきた

どうしてこんな事をしているのだろう……?

ぼんやりとした頭の中でナナは考える
幼い頃からずっと一緒に育ってきた
ダンテは弟としてすごくかわいくて、成長すれば頼りになった
どうして私に恋をする感情を持ってしまったんだろう…?
どうして私ダンテとキスしてるんだろう……


「そう…ダンテくんとは同じ部屋なのね」

ダンテとナナが去った後
ネロはキリエと共に彼女の教室の前の廊下で話をしていた
二人は会うのが久しぶりでとても会話が弾んでいた
ネロは自分が入学してからダンテと同じ部屋になったことなどを話した

「本当にアイツは世話が焼けるっていうか…迷惑ばっかりかけてくるんだ」
「ふふ…でもネロなんだか楽しそうよ?」
「そ、そんな訳ねぇだろ!迷惑してるんだよ俺は…」

ネロがこんな風に誰かの事を話すということはなかった
それがキリエにとっては嬉しい事だった
小さい頃から周りとケンカばかりしていたネロをキリエはずっと心配していたのだ

「……ところでキリエはあのナナ…って人と仲いいのか?」
「えぇ、同じ部屋で住んでいて友達よ」

ネロは気になっていたナナの存在を尋ねた
キリエはふと思い出してナナとダンテが去っていた方向を再び見る

「ナナ……大丈夫かしら?」
「何かあったのか?」
「今朝……ううん入学式の日からなんだか様子が変なの…」
「変……?入学式から?」
「そう……まるで何かに怯えてるような感じ…」

キリエがナナの顔を思い出して心配しながら答える
ネロも不思議に思った。一体彼女は何に怯えているのだろう……
しかしキリエはすぐにニコッと微笑んでネロを見る

「でも…ダンテくんが追いかけてくれたんだし、大丈夫よね」
「あ、あぁ…そうだな」
「きっとナナの悩みもダンテくんなら解決してくれるわ……――――だって弟だもの」
「え……?」

キリエの言葉にネロが思わず声を出す
その声に気づいたキリエがネロの顔を見る

「……誰が、弟だって……?」
「? ダンテくんよ、知らなかったの?彼はナナの弟なのよ」
「なん、だっ……て……?」

ネロは衝撃の事実を聞いた
そして頭の中でダンテの言葉や表情が思い出される


ダンテはやがて満足したのかナナの唇を味わうとゆっくりと離した
二人の間に銀の糸が引く
ナナは頬を赤く染めて彼を見る

「そんな顔すんなよ、襲うぞ」
「っ!」

ナナはそれを聞いて慌てて顔を俯かせた
ダンテはその様子にククッ、と喉の奥で笑った

「まぁ……そう遠くはないかもな」
「!?」
「……もう一度言っておく。俺はアンタを絶対に離さない」

ダンテは両手でナナの顔を挟み、自分の方に向かせる
その瞳は鋭く、獣のようだった
ナナは先程のように声を出そうとしても出なかった

「……毎日教室まで迎えに行くからな、逃げたりするなよ」
「………」
「俺が本気だってこと教えてやる。ナナから俺を求めてくるようになるまで…な」

最初の頃のようにニヤリと笑ったりもしなかった
鋭い瞳で無表情で…ナナを見つめてただそう言った
ダンテはそれだけ言うとナナの腕を掴んで立ち上がらせる

「行くぞ、一緒に帰らないと怪しまれるだろ」
「……うん」

ダンテに腕を掴まれたままナナは歩き始めた


090404

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