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「今年の新入生代表の男の子すごくかっこよくない?」
「そうよねぇー私狙おうかな〜」

入学式が終わり生徒たちはそれぞれの場所へと戻る
大抵の生徒は授業がないので皆寮に戻って過ごしている
そしてここ女子寮では先程の入学式の話で盛り上がっていた、それもすべてダンテの話だった
ナナはあちこちから聞こえてくるダンテの話題に耳を塞ぎたくなった

どうして どうして なんでダンテがここにいるの?

ナナの頭の中はその事で一杯だった
ベッドにうつ伏せになりながら枕に顔を埋めて考える
先程から彼女が心配になっているキリエは声をかけた

「大丈夫?ナナ…」
「! う、うん……」

キリエに声をかけられてハッ、と顔を上げて
彼女を心配させまいと微笑んだが、上手く笑えていないだろう

「……今日の新入生ダンテ、って名前だったけど……」
「………うん。あの子が弟」

キリエにダンテの事を聞かれて体がビクリとなった
しかしここで弟ではないと答えてもどうせ後にバレるだろう。ナナは答えた
大丈夫、キリエはダンテと何があったかなんて知らない。知られたくない
キリエはナナの言葉を聞いてパァ、と笑顔になった

「よかったじゃない、弟がいれば心強いわね。やっぱり家族が学校にいると嬉しいでしょ?」
「……そ、うだね……」

ナナはぎこちなく微笑んだ
キリエは立ち上がって自分たちの部屋の窓を見る。彼女の視線の先には男子寮がある

「きっと今頃は男子寮で説明を受けてる頃じゃないかしら、ネロと一緒に……今日はもう会えないけど明日には学校で会えるわね」

明日……
ナナはそれを聞いて益々不安になった
彼はどんな顔をするのだろう、自分はどんな顔をして会えばいいのだろう


「消灯は11時だ。それからこれは男子女子共通だが、男子寮に女子を入れてはいけない。もちろん女子寮に男子を入れてもいけない、以上で説明は終わりだ!」

教師からの説明を受けた後、新入生の男子たちはそれぞれ用意された部屋へ向かう
ダンテも立ち上がると自分が用意された部屋へと向かう
誰と一緒の部屋だとか、そんな事はどうでもよかった
自分の部屋にたどり着き扉を開けると、すでに中に人がいた
自分と同じ銀髪の髪の少年がダンテをじっ、と見ていた

「……まさか今年のトップと同じ部屋とはな」

ダンテはその言葉に何も答えずにそのままベッドへと身を沈めた
何の言葉も交わさないダンテにネロは少しムッとなった

「何かしゃべれよ……ムカつくな」
「……さっきからうるせぇな」

ダンテが自分に絡んでくるネロを睨みつけて言う
その瞳にネロは一瞬怯えたがすぐにニヤリと笑う

「しゃべれるんじゃねぇか…しかも随分とイメージが違う」
「……別にトップ取ってるヤツが真面目とは限らねぇだろ」

ダンテはベッドから体を起こして頭を掻く
ネロは向かい側に座った

「アンタ…ダンテ、だよな?何の目的でここの学校に来たんだ?スポーツか?」
「好きな女追ってここに来た」

ダンテの言葉にネロは思わずキョトンとする
トップでこの学校に入ったのも全部その女の為だと言うのか…
ダンテはネロの顔を見てふっ、と笑う

「バカバカしい理由だと思うか?でもな、離したくねぇ大事な女なんだよ」
「……いや……そういう理由で入学するのもありなんじゃないのか?」

ネロから出た言葉にダンテは目を見開いた
普通なら否定の言葉を言われても当たり前なのに…この少年は否定をしなかった
ダンテは嬉しくなってネロの頭を撫でた

「お前いいヤツだな〜ありがとな坊や」
「うわっ!やめろ!坊やって呼ぶなお前もだろ!ネロだネロ!」

なんなんだよコイツ、とネロは言うとそのまま部屋を出て行った
飲み物でも買いに行ったんだろう
ダンテは笑いながらネロの背中を見送った。途端に静かになる部屋
ダンテは窓の外の景色を見る、見えるのは女子寮だ。そっと窓ガラスに手を当てる

「……そこにいるんだろ?ナナ」

自分がここにやってきた目的の人物の名前を愛しそうに呼ぶ
恐らく今日の入学式で彼女も自分の事を見た筈
きっと自分から逃げるために向こうも何か考えている筈だ

「……今度は逃がさないぜナナ」


090309

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