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「バージル、ダンテ!はやく!」
「まってよナナ」

家から飛び出して先を走っているナナが後ろにいる二人に振り返って言う
そのナナの後を必死に追いかける双子の弟たち
その姿を確認しながら角を曲がると近所のおばさんたちに出会った

「あらナナちゃん」
「こんにちはおばさん!」

ナナが挨拶をしてペコリと頭を下げると、おばさんはその小さな頭を撫でた
そしてようやく追いついたバージルもおばさんに気づくと頭を下げて「…こんにちは」と挨拶をした
ダンテは挨拶をせずに、すぐにナナに抱きついた

「やっとおいついた、ナナ〜」
「ダンテ!あいさつしなきゃだめでしょ!」
「あらあらダンテくんはナナちゃんが大好きなのねぇ」

ナナに引っ付いて嬉しそうに微笑んでいるダンテを見ながらおばさんは言う
その言葉に気づいたダンテは目を輝かせて頷く

「うん!おれナナのことだいすき!おおきくなったらけっこんするんだ!」

その言葉におばさんたちは体が止まった
そしておばさんは苦笑いしながらダンテに目線を合わせるようにしゃがむと

「ダンテくん。ダンテくんはナナちゃんとは結婚できないのよ」
「え……」
「ダンテくんとナナちゃんは姉弟だからね」

それだけ言うと「もうこんな時間!?」とおばさんたちはそれぞれの頭を撫でてその場を去った
ナナとバージルはおばさんたちに手を振る
ダンテは呆然と立ち尽くしたままだった

結婚できない
その言葉に深く傷ついている自分がいた
心配になったナナとバージルが顔を覗きこむ

「ダンテ?」
「どうしたのダンテ、おなかいたいの?」

顔を俯かせていたダンテはナナに抱きついてそのまま彼女の胸に顔を埋めた
ナナが困惑しているとバージルも困った顔をして、とりあえずダンテの頭を撫でた

なんで なんで なんで
おれはこんなにもナナがだいすきなのに
かあさんのつくるサンデーよりもピザよりもナナがいちばんだいすきなのに
どうしてけっこんできないの?


「あら?ダンテ」

もう寝たと思っていたダンテがエヴァのいるリビングにやってきた
エヴァが手に持っていた毛糸を横に置くと、優しく微笑んでダンテに手招きをした
ダンテはそれに答えてエヴァの元に近づく、彼女はダンテを抱き上げて膝の上に乗せた

「どうしたの?怖い夢でも見たの?」
「………かあさん」
「ん?」
「……おれとナナ、どうしたらきょうだいじゃなくなるの?」

ダンテの言葉にエヴァが驚いて目を見開く
ダンテはエヴァの答えを待つように彼女の目を見る

「どうしたの?ナナとケンカでもしたの?」
「んーん…」
「ナナはいいお姉ちゃんでしょ?バージルもダンテの事もめんどう見てくれてるじゃない」

だって
きょうだいだとけっこんできないんでしょ…

「どんなにケンカしても、離れていてもナナはずっとあなたの姉弟。あなたの血の繋がった家族なの、切ることはできないの」
「………」
「さぁ、もう寝なさい」

だけどね母さん
それじゃあダメなんだ
俺はどうしてもナナが欲しいんだよ


「ナナは進路どうするんだ?」


夕飯の時間
スパーダーが手を止めてナナに尋ねた
ドキリとしながらダンテの方を見ると、彼もこちらを見ている

「……こ、公立高校に行こうかな、近くの……」
「そうか、ナナなら大丈夫だな」

ナナの言葉にスパーダーは微笑むと、また手を動かし始める
ダンテも再び手を動かし始めた。ナナもそれを見て安心すると手を動かし始める
帰宅する時の先程のダンテの目を思い出すと鳥肌がたった
怖かった。それが一番の理由だ
だけど彼はどうしてあんなに高校にこだわるのか、それが疑問だった


「ナナ」

夕食を済ませ、部屋に戻るナナにバージルが声をかけた
手には数冊のパンフレットらしきものを持っている

「どうしたの?」
「…ナナには必要ないかもしれんが、一応渡しておく」

そう言って彼の手から渡されたのは私立高校フォルトゥナ学院の案内書だった
有名な私立の学校なのでナナも名前だけは聞いた事があった
ナナが思わず彼を見ると、彼は微笑んでいた

「ここなら色んなことが学べるからな、かなりいいぞ。でも公立に行くナナにはもう必要ないかもしれんがな…」
「そんな事ないよ。ありがとうバージル」

ナナはバージルに微笑んで階段を上がっていく

「ナナ!……ダンテには見せない方がいい」

バージルの言葉に驚いて彼を見る
その言葉と共にダンテのあの瞳を思い出し頷いた
部屋に戻ってからベッドの上に寝転がり、先程もらったパンフレットを開いた
学校全体の写真が写っており、雰囲気は悪くない感じだった
勉強のカリキュラムも悪くはない

「全寮制……」

その学校には寮があった
別に強制というわけでもないのだが、学校から遠くに住んでいるものに与えられる特典
ここのフォルトゥナ学院はナナの家からは遠い場所にあった

「……ここに行くとしたら寮に入らないとダメね」

ナナがそう呟くと、部屋がノックされる音が聞こえた
体を起こしてパンフレットを枕元に隠すと、返事をした

「俺、入っていい?」
「ダンテ?……どうぞ」

部屋に入る事を許可されるとダンテは扉を開けて入ってきた
ナナもベッドに座って彼に微笑む

「どうしたの?何か用事?」

ダンテは自分を見下ろしたまま無言でいるのでナナは首を傾げた
その内怖くなってきて小さな声で彼の名前を呼んでもやはり彼は無言のまま
しかし彼の手が伸びてきて思わず目を瞑った
だけど肌に感じるのは彼の温もり。抱きしめられている事に気づいた

「だ、ンテ……?」
「……もうガマンできねぇ」
「え?」

彼の呟きにナナはもう一度聞こうと、彼から体を引き離そうとしたが
その前に彼にベッドの上に押し倒された
彼女の視界には見慣れた天井が写っていたが、やがて青い目が彼女を見下ろす

「ダンテ…?な、なんの冗談…?やめて よ……」
「冗談なんかじゃねぇ、俺は本気だ」

ダンテの少し怒ったような声にナナは体がビクリとなった
そしてダンテは少し彼女に顔を近づけると

「好きだナナ、愛してる」


090130

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