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彼女に恋をした
だけど

彼女は好きになってはいけない人だった


「ナナは進路どうするの?」


エヴァが食器を洗いながら朝食の食パンを食べているナナに聞く
うーん、と考えていたが

「特に…近くの公立高校にでも行こうかな?」

ナナは微笑んでエヴァに答える
ナナは中学3年生だ
そろそろ自分の進路を決めなくてはならない
今の時点では特に就職とか先のものは考えていなかったため、とりあえず近くの公立高校にでも入学しようかと考えた

「そう…勉強がんばりなさいね」
「うん!」

その時2階からバタバタと足音を立てながらダンテが降りてきた
ダンテはナナの姿を確認して安心していた

「あー危ない…もう少しで遅刻する所だったぜ。てかナナ、なんで起こしてくれねぇんだよ」
「何回も起こしたわよ、ダンテが起きないのが悪いわ」
「知らねぇよ…あー…でもよかったナナがまだいて」

ナナがマグカップを持ち、紅茶を口にすると横からダンテが顔を覗き込んできた
何?と振り向く前に頬に柔らかい感触がした

「おはようナナ」

ダンテが朝の挨拶に、とナナの頬にキスをした
彼女は思わず頬を押さえてダンテを睨む

「ダンテ!それはもうやめてって言ってるでしょ!」
「なんでだよ、朝の挨拶だろ?普通じゃん」
「……ダンテそんな事している暇があったらさっさと飯を食べろ」

今までの様子を見ていたバージルはコーヒーを飲んでからそう言うと、立ち上がって玄関に向かう

「ナナ、そいつはほっといて行くぞ」
「う、うん」
「あ!ちょっと待てよ!!」

バージルはナナの手をつかむ、ナナもそれに従ってバージルの後に続く
ダンテも食パンを口に挟むとすぐに二人の後を追いかけた

これが私たちの毎日の日課と言ってもいいほど
姉弟仲良く、大人になるまでずっと過ごせると思ってた

だけど……


「来週までに進路調査書を書いて提出するようにー!」

担任から貰った紙を見てナナは考える
どこの公立高校にしようか、できれば家から近いところがいい

「ナナ〜!迎えに来たぜー!」

ダンテがひょっこりと扉から顔を覗かせる
ナナはダンテに微笑むと紙を鞄の中に入れた

「いいなーナナは、あんなカッコイイ弟が毎日迎えに来てくれて」

友人たち数人が羨ましそうに言うのだがナナはその言葉に苦笑いする

「ずーっと引っ付いてきて赤ちゃんみたいなんだけどね…」
「でも弟っていうか……彼氏みたいよね」
「彼氏!?」

ダンテがいつの間にか教室の中に入ってきて友人の言葉に飛びついた
ナナと友人は驚いてダンテを見る

「なぁなぁ今の言葉マジ?俺ナナの彼氏に見える?」
「え…あーうん、まぁ」

困ったように笑いながら言う友人にダンテは嬉しそうな顔をする
ナナはダンテの頭を軽く叩いて、彼の手を引っ張って急いで教室を出た

「なんだよナナ、怒ってんのかよ」
「当たり前でしょ!恥ずかしいじゃない、あんなの…」

ナナはダンテの数歩先を歩く
ダンテは怒っているナナに嬉しそうに微笑むと、彼女に抱きつく

「ちょっ…!ダンテやめてってば!」
「……俺は恥ずかしくなんてなかったけどな、むしろ嬉しい…」

"姉弟"と言われるよりは……

「ダンテ……?」

キミの"男"として見られるのが……すごく嬉しかった

「明日からは弟じゃなくて彼氏って言っちまうか?」
「ば、バカ言わないでっ!」
「あら?」

未だに引っ付いてくるダンテにナナは彼の頭を押して引き剥がそうとする
その様子を見ていた近所の人が声をかけてきた

「ナナちゃんとダンテくん!おかえり!」
「ただいまおばさん!」

数人の女性がナナとダンテの元に駆け寄ってくる
ダンテはその女性たちを見て瞳を曇らせると同時に苦い記憶を思い出すと、あっさりとナナを離した

「ナナちゃん中3でしょ?進路とか決まったの?」
「あ…まだハッキリとは……」

そうなの、と意外そうな顔をする
ダンテはその後ろで黙って見ていた

「ナナちゃんならいい高校に行けるわ、それじゃあね!ナナちゃん、ダンテくん!」

手を振って去る女性たちにナナは笑顔で手を振り返す、ダンテは無表情のままだった
その様子に気づいたナナはため息をつき、彼の頭を叩く

「って!何するんだよ」
「ちゃんと挨拶ぐらいしなさい!」

ナナの言葉にダンテはむぅ、と頬を膨らます
そんな彼を無視して先に歩き出す

「なぁ……ナナ」
「何?」
「……さっきの話だけど、高校は家から通える所にするんだよな?」


ナナが後ろを振り返る
ダンテは真剣な表情をして自分をじっと見ていた
何故かわからないがその瞳に背中がゾクリとなった

「まだちゃんと決めてないから……わかんない」
「わかんないって何だよ、家にいるんだろ!?」
「っ!」

ダンテはナナの肩を掴んで壁に押し付ける
その行動に怯えて、ダンテを見るが先程の表情と変わって焦っているように見えた

「……い るよ……」
「……そっか」

ダンテはあっさりとナナの肩を離し、いつものようにニコッと微笑む
ナナはゾクリとしながらも、なんとか笑顔を見せる

「それならいいや、帰ろうぜ!」


彼が何故私にあんなに引っ付くのか
彼が何故あんなに焦っていたのか

その理由を知るのも、そう遠くはない話


090111

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