やさしい手がここにあったら


その手が届くことはなかった



デビルメイクライと書かれた看板の店に一人の女性が小走りでやってくる
周りにはガレキなどが落ちており足元はとても不安定だ
その店自体も天井がなかったり入口は未だにボロボロだった

「ダンテ…いる?」

足元のガレキをどかしながら建物の中へと声をかける
中は暗くてよく見えない、ここの主の姿さえも
女性――ナナは周りを見渡してふと気がついた。ソファーの所に目的の人物がいたからだ

「ダンテ!よかったーいたのね」

嬉しそうに微笑みながら彼の横に腰掛ける
ダンテは顔を俯かせたままで彼女の方を見なかった、それには気にせずにナナは話を進める

「数日前にあの大きい塔が出てきてから心配になって様子を見に来たら事務所は壊れてるし、ダンテはいないし……私心配になって毎日見に来てたんだよ?一体いつ帰ってきてたの?」

声をかけるがダンテは何の反応もしない
さすがに彼の様子がおかしいことに気がついて小さく名前を呼ぶ
いつもはベイビーとか笑いながら抱きしめてくる彼が何もしてこない

「ダンテ……――?」

抱きしめられた
ダンテは相変わらず顔を見せないままでナナの胸に顔を埋めている

「ダンテ?」
「……どこで違ったんだろうな、俺たち」


なぁバージル
俺たちが幼い頃に母さんは悪魔に殺された
皮肉なことにその血は俺たちにも流れている
俺は世界を支配するほどの力はいらないんだ、愛する人を守る力さえあればいい
母さんを守れなかった…だからこそ今度は守りたい
ナナを守りたい…

「ねぇダンテ、どうしたの?ねぇダンテ、ダンテってば」

あんたはずるい――バージル



彼の為にとナナはその日の夕食にピザを作った
あの後ダンテはただ一言「一人にしてくれ」と呟くとそのまま2階の部屋に篭ったそんな彼を放っておくことなどとてもできなかったし、今夜泊まっていくことにした

「ダンテー、ピザできたよ」

下からダンテの部屋へと声をかけてみるが出てくる様子がない
階段を上り彼の部屋の扉を数回叩く

「ダンテ…下にピザ置いておくから食べてね?………おやすみなさい」

ダメ元だったがやはり彼から何も返事はない
少し切なくなったが彼が自分から話してくれるまでナナは何も聞かないことにした

"――どこで違ったんだろうな、俺たち"

ダンテのあの言葉がとても気になった
俺たちとは誰のことなんだろう?ダンテと私?
それとも……

「……雨、か」

ナナはどしゃ降りに降り出した雨を見て部屋に入った



どしゃ降りの雨
塔の屋上に登れば俺と同じ顔をしたアイツが立っていた
相変わらず冷たい目で俺を睨んでやがる、だけど俺と同じ目をしている
髪の毛が濡れて髪の毛が落ちれば俺と同じ顔
気持ち悪い、反吐が出る

なぁバージル
俺たちは同じ環境で育って、分け隔てなく育てられた
なのになんでアンタはそんなに力にこだわるようになったんだ?


真夜中
ダンテは1階へと降りて来ていた、特に理由もなくブラブラと歩いていた
そしてふとピザが置いてあることに気がついた
そういえばナナが作ってくれていたっけ、と彼女の顔を思い出す
自分の大切な女性、彼女と過ごす時間はとても楽しいものだ

"ダンテ――"

ダンテはハッとなって周りを見渡す
そういえばナナは今どこにいるのだろうか?
いつだったかわからないが彼女が自分におやすみの挨拶をしてきたような覚えはある
2階へと続く階段を激しい音を立てて上る、空いている部屋を
彼女が泊まりに来たときに使う彼女専用の部屋を開けた
そこに寝息を立てて眠るナナの姿があった、思わず険しくなっていた顔の力が抜けて髪の毛に優しく触れる。次に頬へと、温かさを感じる
ダンテはそのまま彼女が眠るベッドへと潜り込んだ

「―――ん、ダン…テ…?」

気配を感じてナナがうっすらと瞳を開ければダンテは彼女を抱きしめて顔を見せない
優しく彼の頭に触れる

「どうしたの…?」
「このまま……このままでいさせてくれ」
「ダンテ……」


なぁバージル…
久しぶりに再会できたこの世で唯一の肉親なのに
アンタに会えて、少し嬉しかったんだぜ?





ちょっと意味不明なシリアス短編ですみません、おそらく続くと思われます。たぶん…決してバージル←ダンテとかではありませんからねっwwただ3のED後でバージルはやっと会えたこの世で唯一の肉親なのにああいう別れをしてしまって寂しくて少し心が病んでいるダンテが書きたかったんです…今回のダンテはバージルのことずるいとか言ってますけどでは何故バージルがあの行動をとったのか彼にも理由はあるはず…それを続きで触れられたらなーとか思ってます。ヒロインももうちょっと出したい…
約30の嘘
110815


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