捨てさることだって時には必要な選択だよ


プッチ神父との戦いから数ヶ月の月日が流れた
私ももちろん戦った
姉の徐倫や、父の承太郎と共に……

負けるのかもしれないと思ったけど、みんなで力を合わせて無事に勝つことが出来た
この戦いで世界を救えたというのも嬉しいんだけど
一番嬉しかったのは父さんと姉さんが和解したことだった
もちろん私も父さんを誤解していたけど、あの戦いで父さんの私たちに対する想いを知る事が出来た

バラバラだった家族が一つに戻る事が出来た
ママも再婚を考えているらしい
私たちは今父さんの家に遊びに来ている
私と姉さんと……そしてもう一人来ていた……


「なまえもういいぞ」

承太郎の肩を揉んでいたなまえは肩から手を離した
そしてうーん、と背伸びをする

「どう?マッサージ上手くなったでしょ?」
「…あぁ、大分楽になった」

笑顔で言うなまえに承太郎も薄く微笑んで答えた
そこに徐倫がやってきた
いつもよりも真剣な表情で二人の元へやってきた

「父さん」
「……なんだ」
「……彼との事を認めて」

徐倫の言葉に承太郎は眉間に皺を寄せる
徐倫は承太郎の前で床に座り込み頭を床につけて頼んでいる
しかし彼は近くにあった新聞を手に取り読み始めた

「父さん…!」
「……ダメだと何回も言ってるだろ」
「だけど……っ!いいじゃないアナスイは努力してるじゃない!」

承太郎の答えに唇を噛み締める徐倫
二人の様子になまえがオロオロしていると扉が開いた

「お父さん!廊下の掃除がおわりましたっ!!」

雑巾とバケツを持った男――アナスイがリビングに入ってきた
承太郎は小さく舌打ちを打った

「(ちっ…)じゃあ次はトイレ掃除だ」
「はいっ!」

アナスイは元気よく返事をすると、また部屋を出て行った
なまえは徐倫におずおずと尋ねた

「姉さん…アナスイさんは何やってるの…?」
「見ての通り掃除よ」

徐倫はキッとした目で承太郎を睨みつける
その目はまるで最初の頃、父親を嫌っていた時の瞳だ

「なまえと三人で来たのは今日が初めてよね?」
「う、うん……」
「その数日前から何回も二人で来てたのよ!そのたびにアナスイは父さんに気に入られようと努力してああやって掃除とかしてるのよ!……なのにっ、このクソ親父ときたらっ!」

徐倫が承太郎に殴りかかるが、承太郎はそれを簡単に受け止める
なまえは二人を止めようと声をかけるが本人たちには聞こえていないらしい
仕方なく思ったはなまえ部屋を出てアナスイの元へ向かった


「アナスイさん……」
「! なまえちゃん」

便器を磨いていたアナスイになまえが声をかける
アナスイは便器を磨くのをやめてニコリと微笑む

「……アナスイさん、別にそんな事しなくてもいいですよ。父さんはアナスイさんの事は嫌ってないと思うんです……ただ姉さんが大事なだけで…」
「うん……けどな」

アナスイは雑巾をバケツの水に沈めるとなまえの方に向き直る
そして瞳を真っ直ぐと向けた

「…俺は承太郎さんに認めてもらってから徐倫と結婚したいんだ。好きになった相手の親に認めてもらいたい……とにかく俺は承太郎さんに認めてもらえるまで何でも努力するさ」

アナスイの言葉におもわずジン、となる
その背後から承太郎が現れた

「おい」
「! お父さん!」
「それはやめろ」
「は、はい……」
「……紅茶入れろ、4つ分だ」
「え?4つ……?」
「……お前の分もだ、ちょっとは休め。倒れられたら迷惑だからな」
「……はい!……承太郎さんっ!」

そのまま立ち去ろうとする承太郎を呼び止めるアナスイ
承太郎はアナスイの方には向かず、首を少し横に向けた

「なんだ」
「……俺は貴方のお嬢さんが本当に好きです、愛してます。だからその親である貴方に気に入られるまで…俺は何でもします」

アナスイは自分の想いをぶつけるとそのまま頭を下げる
声が聞こえたのだろう
徐倫もアナスイの隣に来て同じように頭を下げた

「……もう明日からは来なくていい」
「え……?」
「……許す。徐倫を泣かせたら許さねぇからな」

承太郎はそれだけ言うと奥の部屋に行ってしまった
許してもらえた…二人の結婚を……
徐倫は嬉しくなってアナスイに抱きついた

「やったわアナスイ!父さんに認めてもらえたっ!」
「あぁ…嬉しいよ徐倫」
「よかったね二人共…!」
「うん、ありがとねなまえ。結婚式には絶対来てよ」
「もちろん家族だもん」
「……ありがとうなまえ………父さん」



「姉さんたち着々と式の準備進めてるって」

なまえの言葉に承太郎はそうか、と答えてコーヒーを飲む
その様子に名無しはふふっ、と笑う

「なんだ?」
「…父さんってば本当はあの戦いの時から認めてたんでしょ?けど姉さんの事渡したくないから認めなかったんでしょー」

ニヤニヤ笑うなまえにため息をつく承太郎
承太郎はマグカップを置くと、隣に座っているなまえの腕を掴んで引き寄せ抱きしめた
突然の事になまえは瞳をパチパチさせる

「親にならねぇとわかんねぇだろうが……徐倫もなまえも、俺の大事な娘なんだよ…」
「父さん……」

昔姉さんに聞かされていた
父さんはあたし達の事が大事じゃない、なんとも想っていないと
だけど違う……
この人もやはり親だ。こんなにも娘の事を想ってくれている

「…私も父さんは大事な親だよ、自慢の父親!」
「なまえ……」

ぎゅう、と大きな背中に腕を回して抱きつく娘
愛しくなりその額にキスでもしようと唇を近づけた……が

「父さん。大事な娘だからこそ、時には娘の頼みを聞くのも大切だと思うの」
「……なんだ突然」
「……姉さんの事もあったしなかなか言えなかったんだけど紹介したい人がいるの」
「……何?」

家のインターホンが鳴る
なまえは来た来た、と玄関のほうへ向かう
承太郎がしばらく待っているとなまえともう一人の人物が入ってきた

「どーも承太郎さん!」
「! 仗助!?…どういう事だ?」

承太郎はなまえを見る
なまえは仗助の腕に自分の腕を絡ませてえへへ、と笑うと

「仗助さん、何回か父さんに会いに来てたでしょ?その時に何回か話しているうちに息があっちゃって……付き合ってるの」
「…なんだと…?」

承太郎は突然の事に驚く事しかできない
徐倫の事もあってようやく片がついたと思ったのに、まさかもう一人の娘の方にまで……

「父さん。私たちの結婚を認めて、姉さんもいいんだし…私もいいよね?」
「……ダメだ」

承太郎はそう言うと仗助となまえの間に入り、なまえを自分の方へ引き寄せた
そして仗助を外に追い出す

「仗助…お前はもう家に来るな。結婚は認めん」
「な…!承太郎さんっ!」
「そんな!ひどいわっ父さん!」


そして再び繰り返される……

「承太郎さん!お風呂掃除終わりましたっ!」
「(ちっ…)じゃあ次窓拭き」
「了解ッス!」

二人の結婚を認めてもらえるのはいつになるのか…?

(娘を一気に二人も失って堪るか)





もしも6部の最後の戦いで徐倫たちが勝っていたら…そしてその数ヶ月後の話を想像した。承太郎はやっぱり大事な娘だから結婚はなかなか認めないんじゃないかな、と。でもアナスイが真剣なのがわかってアナスイが聞きたがっていた「許す」って台詞を貰えてたらいいなぁーって想像した。でもこの話ヒロインいらなくねぇ?ってなってしまったけどアナスイの想いを聞いてもらう人や承太郎の想いを聞いてもらう人が欲しかったんで出しました。徐倫の妹です。んで仗助も出してしまった。6部仗助は28ぐらいですよね?多分…たまに承太郎のいるアメリカに遊びに来てそんでヒロインと知り合って恋人になっていたということです。なんだかグダグダな話ですみませんでした…
選択式御題
090425


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