ラプンツェルのブーケ


浅い眠りから目覚めたナナは体を起こして時計を見た
時刻はすでに次の日を迎えようとしていた
隣に寝ている人物を起こさないようにそっ、とベッドから抜け出そうとした
しかし気配にすぐ気づいたらしくナナの腕を掴んだ

「どうしたんだ…?」
「起こした?ごめんなさいクリス。明日も仕事だし帰ろうと思って……」
「こんな時間にか?泊まっていけよ」

クリスは体を起こして後ろからナナを抱きしめる
彼の二の腕の部分を撫でる
クリスがまた口を開いた

「ナナ…この間の話考えてくれたか?」

それを聞いてナナは頭の中にある記憶を引きずり出す
数ヶ月前から一緒に暮らそうと言われていたことだ
もちろんクリスの事は好きだし、悪くはないのだが……

「ごめんなさい…もう少し時間をちょうだい…」
「……わかった。でも今日はここにいてくれ」

ナナのうなじにキスをして再びベッドに戻る
彼女も同じようにベッドに戻った



「ありがとうございました」

ナナは花束を渡して笑顔で客を見送る
彼女は花屋で働いている
クリスと出会ったのもこの店だ。3年前に死んだ相棒へ花を贈るのだと言って訪れた
その時に接客したのがナナでクリスと共に花を選んだ
何故かそんなクリスを放っておけなくなったし、彼もちょくちょく店を訪れるようになり自然と惹かれあった
最近アフリカに行っていた彼が相棒を連れて戻ったということも聞いた
そしてその時に彼の入っているBSAAの組織の事も聞いたのだ

「ねぇナナ、あの彼氏とはどうなの?」
「え?どうって……?」

休憩時間中に同僚に突然聞かれた
どうと聞かれても仲良くやれている、と答えた
だが同僚は呆れたような顔をした

「そうじゃなくて…そろそろ結婚とかするの?」
「結婚!?まさかそんな…」
「えー?そうなの??付き合って2,3年は経つでしょ?そろそろかと思ったんだけど…」

結婚どころか同棲さえもしていない
一緒に暮らす事は大分前からクリスにも言われている
だがどうしても一歩前に踏み出す事が出来ないでいるのだ
それは彼の仕事の事だ
任務によってはしばらく帰って来れない時もある
それに彼は優しい人だから自分の為に無理をするのではないかと思う
そう考えたら一緒に暮らすなんて事はできない
最近では別れた方がいいんじゃないだろうか、とさえ思えてしまう

「ぅっ…!?」

ナナは思わず片手を口に当ててトイレへと駆け込む
トイレに行って吐き出すと身体が震えた

「まさか……」




「あら素敵な指輪ね、クリス」

箱を開けて指輪を眺めているクリスにジルが声をかける

「いよいよ彼女にプロポーズかしら?」
「あぁ……」
「どうしたの?」

クリスのぎこちない返事にジルが尋ねる
箱の蓋を閉じてクリスはジルを見た

「…同棲の事ですら返事をもらえてないのに、プロポーズはやっぱりマズイだろうかと思って…」
「何言ってるの!同棲したって結婚すればいずれは一緒に暮らすんだし…それならプロポーズした方がいいわよ。さっさと身を固めなさい」
「そうだな……ありがとうジル」

クリスはお礼を言って箱をポケットに入れるとその場を後にした



ナナから話があると言われたクリスは部屋に彼女を呼び出した
自分も話があると彼女に伝えて
テーブルに向かい合って座る。ナナの表情はどこか暗い

「なんだ?話って」
「……私と別れてください」

頭を下げてナナは言った
その言葉に目を見開いて固まるクリス

「どうしてなんだ…?」
「クリスの仕事の事とか考えたら私たちって違う世界で生きてるな、って思うの。クリスの仕事はとても誇りのある仕事だと思う。それなのに…私のせいで無理して欲しくない……クリスは絶対私のことになると無理すると思うの…っ」

最後の方には涙が出てきた
そしてナナはテーブルの上に妊娠検査薬を出した
陽性、と反応が出ている
クリスはそれを見てナナの傍に近寄り彼女を抱きしめた

「…別れられる訳ないだろ。俺はあの日ナナに出会わなければBSAAにはいなかったかもしれないんだ」
「え…?」
「ジルを失って…命をかけてまでやっている自分の仕事に迷っていた。このまま続けても意味がないんじゃないかって」

だがあの日ナナと出会い、ナナの笑顔に惚れた
彼女を守りたいと思った

「お前を愛してるんだナナ……別れるなんて言わないでくれ…っ」
「クリス……っ」

ぎゅう、と力強く抱きしめられた
涙が溢れる。ナナも彼の背中に腕を回した
しばらく抱きしめあうとクリスはポケットから指輪を取り出した

「結婚しよう…俺がナナと子供を守る」
「…はいっ!」

クリスはナナの薬指に指輪を嵌めて、彼女の額にキスをして唇にキスを落とした




クリスにプロポーズされたい!!できちゃった婚でもクリスはちゃんと責任を取る男です!!
約30の嘘
110202


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