知っていたの、ほんとうは。


退屈だ

ナナは読んでいた雑誌を自分の胸元に置いた
自分が読んでいた雑誌ももうすでに最初の方は内容を覚えてしまうぐらい読んでいた
こんなに退屈なのはここの事務所の主、彼女の恋人であるダンテがいないからだ
3日ほど前に依頼が入りそれも長引いているらしく、彼がいない生活はナナにとっては退屈だった
寂しいし、側にいて欲しい。それほどまでに彼に依存している自分に思わず苦笑いしてしまう

「………早く、帰って来ないかな…ダンテ……」

小さい声で呟いてソファーの上で寝返りを打つと、ふとビリヤード台が目に入った
ダンテはたまにビリヤードをする。ナナはいつもその横で彼がしているのを見ていた
彼が狙った球は必ず落ちていた。そのたびに彼女は嬉しそうな顔をして拍手をしていた
ナナはソファーから体を起こしてビリヤード台の方に近づく、側にあったキューを取る
そしてダンテの姿と、彼に教わった事を思い出しながら体制を構える

コン

「……あはは、やっぱり上手くいかないや」

ナナは球が上手く入らなかった事に苦笑いした
その時ふと、自分の背中に重みを感じた

「そんなんじゃダメだ。もっと強く打て」

聞こえた低い声にナナはドキリと心臓がなるのがわかった
彼女は後ろを振り向かずに、後ろから手を伸ばし自分の手に重ねて教えられるままでいた

コンッ!!

「jackpot!」
「…入った!」

ナナは初めて球が入った事に喜んだ。そして後ろの人物に抱きつく
久しぶりに感じる愛しい人の温もりにナナは目を閉じる
それを十分に感じた後、彼の顔を見ようと顔を上げた

「おかえりなさい!ダン……テ?」

彼の顔を見てナナは目を見開く
赤いコートであることに変わりはない、しかし顔が自分の知っている顔と違う
いつものように無精髭が生えている事もなく若く見えた
ナナが戸惑っていると男が口を開いた

「人の事務所に勝手に入ってビリヤードか、大胆なお嬢さんだな」
「人の…事務所……?」
「まぁいい、悪魔って感じじゃなさそうだ。さっさとお家に帰んな」

男はそう言って事務所の中を見回す。その様子を後ろから見ながらナナは考える
自分がダンテと住んでいる事務所を自分の事務所だと言っている
だったらこの男は……

「貴方……ダンテなの?」
「! なんで俺の名前を知っている!?」

男が驚いてナナを見る
彼の赤いコートをちらりと見る

「だって"ここ"にいるダンテも、貴方と似たような姿をしてるから……」
「"ここ"……?」
「……貴方未来に来たんだよ」

ナナの言葉に(初代)ダンテが目を見開く


そうだ
あの城の中を詮索していたら、いつの間にかスラム街に出ていて
気づいたらここの事務所に来ていた

黙り込んだ(初代)ダンテにナナは声をかける
なんだ、と顔を上げると彼女が優しく微笑んでいた

「もうすぐダンテが帰ってくると思うから……きっとなんとかなるよ」

ナナの言葉に(初代)ダンテはふ、と笑う
そして彼女の長い髪の毛に触れる

「いい女だな、アンタ。(未来の)俺とはどういう関係なんだ?」
「え?えー、と……恋人です」

照れながら、でもどこか嬉しそうに言うナナ
そんな彼女がかわいくて(初代)ダンテは抱きしめた

「な、何するの!?」
「別にいいだろ?さっきだってアンタから抱きついて来たクセによ、それに未来では恋人なんだしな」

バタバタと自分の腕の中で暴れるナナを簡単に押さえつけながら、(初代)ダンテは彼女の頭のてっぺんにキスを落とす
ナナは顔を上げて彼を睨みつける、が彼はニヤリと笑いながら楽しそうに見ている
彼の頬を叩いてやろうと腕を振り上げた
しかしそれもバレていたらしく簡単に腕を掴まれた

「ガッツがあるな、気に入ったぜ」
「っ…!」

(初代)ダンテは掴んだ腕をそのまま自分の口元に持っていき手の甲にキスをする
ナナはその行動に思わず頬が赤くなり手を振り払おうと必死に抵抗する
しかしそこは男と女の力の差が出てしまう。ビクともしなかった

「俺の女に何やってんだ?」

突然聞こえた声に(初代)ダンテは声の主を睨みつける
ナナは待ち望んでいた声に嬉しそうにそちらを見る
ゴツ、ゴツとブーツの音を響かせながらこちらに近づいてくる。(初代)ダンテはやっと見えた顔にふん、と鼻を鳴らすと

「アンタが未来の俺か」
「未来…?ってことは昔の俺か」

ダンテは(初代)ダンテの顔を見てやれやれ、とため息をつくとナナを掴んでいた腕を離した
と、同時にナナを自分の背中に隠す
ナナは自分を守ってくれるダンテの優しさに微笑んで彼の大きな背中に抱きついた
その行動を見て(初代)ダンテは瞳を濁らせる

「どうやって来たのか知らないが…とりあえず##NAME1##に手を出すのはやめろ」
「ハッ!いいじゃねぇか別に、俺はアンタなんだしな」

「なぁ?ナナ」とダンテの後ろに隠れているナナの顔を覗きこんだ
ナナは体をビクリとさせて、ダンテの背中に顔を埋める。(初代)ダンテはその行動にククッと喉の奥で笑う
ダンテは(初代)ダンテを睨みつけた

「過去の俺でもお前にナナは渡さない。さっさと帰れ」
「そうだな…俺もさっさと自分の時代に帰りてぇよ。ナナを連れてな」

(初代)ダンテの言葉にダンテとナナが目を見開いた
二人の顔を見てククッと笑い、(初代)ダンテはビリヤード台に近づいた
そして台の上にあったキューを手にとり球をコンと弾くと、見事に穴に入った。(初代)ダンテはこちらを見てニヤリと笑い

「勝負しねぇか?俺が勝ったらナナは貰う」

どうする?という視線にダンテはため息をついた

「いいだろう。どちらにせよ勝負するまでお前は帰らないだろ」

(初代)ダンテは楽しそうな表情をしてキューをダンテに向かって投げる
ダンテはそれを見事にキャッチする。突然の勝負にナナは不安な目でダンテを見る
その視線に気づいたダンテは微笑んでナナの頭を優しく撫でた

「心配するな。俺が勝つ」
「うん……」

ナナはダンテに微笑んだ。その様子を見ていた(初代)ダンテは始めるぞ、と声をかける
ダンテはビリヤード台に近づく
(初代)ダンテが##NAME1##を見つめる、その視線にナナも気づいた

「荷物の準備をしておけよ?ナナ」
「ダンテは負けないもん……」
「ハッ!じゃあ始めるか」


コンッ!

球を弾く音が事務所に響き渡る。ナナは真剣に二人の勝負を見ていた
(初代)ダンテもさすがというか、勝負になかなか負けていなかった
ふとナナは(初代)ダンテを見る
恋人のダンテより少し若く、なかなかいい顔立ちをしている。ダンテと同じ青い瞳で真剣に球を見る
自分のプレイが終わると(初代)ダンテはこちらを見ているナナと目が合った

「なんだナナ、俺に惚れたか?」

ムッとした表情を見せナナは顔を横に反らす
ダンテはそれを見た後にキューを持って構えると

「お前の勘違いだろ、さっさと勝負を終わらせるか」
「え……」

ダンテが球を弾くと見事に球がすべて入った
(初代)ダンテはあっさりとついた勝負に思わず目を見開く、ナナは嬉しそうに笑ってダンテに駆け寄る
ダンテは自分の元に走ってくるナナを抱きしめた

「すごいダンテ!さすがだね!」
「当たり前だろ?」

嬉しそうな顔をしているナナを見ていた(初代)ダンテは大げさにため息をついた
それに気づいた二人がそちらを向く

「負けちまったな…まぁ勝負は勝負だから仕方ねぇか」

そう言って苦笑いする(初代)ダンテにナナは少し気の毒に思った
そしてダンテの腕を解き、(初代)ダンテに近づいた。彼はナナを見ると始めの頃のように優しく微笑んでいた

「ごめんね……」
「……なんでアンタが謝るんだ」
「……ダンテはダンテでも私が好きなのは"今"のダンテなの。貴方もダンテだけど……違うの」

どういえばいいんだろう、と困ったような顔をするナナ
そんな彼女を見て(初代)ダンテは瞳を細める

未来の俺が帰ってきた時も、ビリヤードの勝負の時も
お前は未来の俺を信用していた
愛しそうに微笑んでいた

同じ俺なのにな……

「……妬けるな」

(初代)ダンテはボソリと呟くと玄関に向かった
その後を追いかけるナナに彼は振り向いて微笑んだ

「じゃあな俺は帰る。お二人さん幸せにな」
「ダンテ……!」
「未来の俺、ナナを泣かせたら今度こそ俺の時代に連れて行くぜ」

(初代)ダンテがダンテを見て言うと、ダンテはふん、と鼻で笑った
今後の人生で色々な事がある。ケンカをして彼女を泣かせる事はあるかもしれない
だけど彼は一生彼女を手放さないだろう
(初代)ダンテはナナの頭を撫で、額にキスをした

「じゃあな幸せにな」

そう言うと彼は消えていった

「……ダンテが二人なんてすごいね」

彼が消えた後ナナがポツリと呟いた
ダンテは彼女の横に来て苦笑いした

「過去の俺が来るなんて勘弁だな。ナナに惚れるなんて事は絶対わかってるんだ」
「でも……絶対ダンテが守ってくれるんでしょ?」

ナナが彼に微笑むと、もちろんだと言う様に彼も頷いた
そしてナナの顎を掴みキスを落とす

「けどまぁアイツのおかげでますます愛が深まったような気がするな」
「ダンテ……」
「愛が深まった記念に……いいだろ?ナナ」

ナナはその言葉に思わず頬が赤くなったが、コクリと頷いた
ダンテは身をかがめて彼女を抱き上げると階段を上って行った





4vs1ダンテという話で書きました。やっぱり1ダンテの口調がよくわかりません…偽です偽、それになんかちょっと1ダンテがかわいそうでしたね…
この話はシリーズ物ですねヒロインは同じじゃないですが、話も繋がってません。第1弾は3ダンテが来た話なんですがよろしければまた見てやって下さい
確かに恋だった
090203


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