醜いものを知らないきみには一生かかっても理解できない感情でしょう


「ナナーどこだ?」

俺が声を出しながら目的の人物の部屋の中を探す
しかし彼女はそこにはいなかった、1階にいるのかと思い階段を下りていくと彼女がいた
ソファーに座っている訳でもなく事務所の入り口の扉を開けて、床に座り込んで長い長いスラムの道を眺めていた

「ナナ、何してるんだ?」
「……ダンテの帰りを待ってるの」

俺はナナの頭の上に顔を持っていき、彼女を見下ろして聞いた
ナナは俺に気づいて顔を上げてただ一言そう呟くと再び視線を戻した

(……またか)

少し呆れながら俺はため息をついた


俺はあの事件を終えてからダンテの事務所に居候することになった
その時にナナと出会った
彼女はダンテの恋人で俺よりも少し年上の女性だった。ダンテの事を誰よりも愛している
彼女がダンテの事を話すときはとても嬉しそうで、ダンテと話をしている彼女はとても素敵だった
ダンテもナナの事をすごく愛しているんだろう
彼女と話すときのあいつはとても愛しく優しい瞳で見ているのだから

そんなダンテが今日、依頼が入り外に出て行った
数日かかるかもしれない依頼らしい。そこで俺が呼ばれた

「ナナを守ってやって欲しい、当然お礼はするぜ?」

お礼を期待して引き受けた訳ではないが、俺は事務所にやってきた
もちろん今回が初めてという訳ではない。何度か呼ばれたことがある
そして必ず起こると言ってもいい現象がこれだ

「……ダンテ、ダンテ……」

ナナがダンテの帰りをいつもああして待っているのだ
無意識なのだろうか、たまに小声でああやってダンテの名前を呼ぶ
まだ彼が出て行って数時間しか経っていないというのに……

「ナナ。ダンテはさっき出て行った所なんだ、まだ帰って来ないよ」
「……うん」
「悪魔が来るかもしれないからそろそろ扉閉めろよ」
「………もう、ちょっとだけお願い」

ナナは苦笑いしながら言うと、再び視線を戻す
彼女は依存しているのだ、ダンテに

きっとあの男も依存している

あの男もきっと彼女に早く会いたくて悪魔となって仕事をしているはず

だけど……

もう少し笑ってくれたっていいんじゃないか?
あいつといる時と同じように少しでもいいから笑顔を見せてくれよ
俺といる時はいつも寂しそうな顔だ

「ナナ、腹減った……なんか作ってくれよ」

俺の言葉に何も答えない
ああ、彼女の心はここにないのだ
結局今日も俺が飯を作る事になる

(……もうやめようか引き受けるの)

俺はそう思いながらキッチンへと向かう
寂しそうな背中を見せてダンテの帰りを待つ彼女をそこに残して

けどまた俺は引き受けるんだろう
今度こそは笑顔が見れるんじゃないかと期待してしまうから





ダンテ×ヒロイン←←←←←ネロのネロ視点から見た二人の関係の話。あ、別にネロはヒロインに感情を持っていたという訳ではなく俺にもあの笑顔で話してくれよ、的な感じでいて欲しかったという…じゃああの←は何だ…?うーんあの←の間には色々な感情が詰まっているのです。ヒロインはもうダンテ無しではいられないほど彼を愛しているのです
090331
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