ワンダーランドで昼食を


「それじゃあママはお買い物に行ってくるからいい子にしててね」
「いってらっしゃいママ!」

額にキスをされて母親の背中を見送ったナナは扉を閉めた
さて一人で何をして遊ぼうかと考えていたとき玄関の扉がノックされた
ゆっくりと扉を開けて隙間から覗いてみれば銀色の髪に赤いコートを身に纏った男が自分を見下ろしていた
どこかで会った事があるだろうか?いや自分にはない
6歳の自分にこんな大人の友達なんているわけがなかった

「お兄ちゃんだれ?ママのおともだち?」
「……お前、ナナか?」
「…そうだよ。お兄ちゃん私の事しってるの?」
「……あぁ」

自分の事を知っている事に安心したのか、少ししか開けていなかった扉を大きく開けて男を家の中に招きいれた

「わたしの事知ってるならお兄ちゃんいい人だよね!いっしょにあそぼ!」
「……ハッ、もう少し疑えよ」

子供の純粋な発想に男はふっと笑った
あ、と何かを思い出したかのようにナナはくりくりとした丸い目を男に向けて名前を尋ねた
男は一瞬言うのを躊躇ったのだがゆっくりと口を開いた

「…ダンテ」
「…ふーん、じゃあダンテお兄ちゃんおままごとしよ!」

こっちだよ、と奥へと入っていくナナを見送ってダンテは部屋の中を見回した
ごく普通の一般家庭の家だった、特別何かあるわけでもない
棚の上に家族の写真が飾られており一つの写真立てを手に取った
なかなか来ないダンテの様子を見に来たナナが彼に声をかける

「どうしたの?」
「……これ、お前の親父とおふくろさん?」
「うん、そうだよ」
「……すまなかったな」
「?お兄ちゃん、早くこっち来てあそぼうよ」

空いている手をぐいぐいと引っ張られてダンテは写真を元の位置に戻した

おもちゃの皿がダンテの目の前に置かれた、もちろん中は何も入っていない
子供用のエプロンを身につけたナナがニコリと笑って口を開いた

「はいお兄ちゃん!今日のご飯はねぇ「カルボナーラだろ?」
「…どうしてわかったの?」
「ママの作るカルボナーラ、お前の大好物だろ?」
「…うん、うん!そうなの!!ママの作るカルボナーラすごく美味しいの!!!」
「…俺も好きだ、お前の作るカルボナーラ」

空いている皿を持ち上げて食べるマネをすればナナは嬉しそうに微笑んだ


* * *

遊びつかれたのかナナはダンテにもたれて座っていた
小さな重みを感じつつも彼は小さな頭に手を置いた

「そろそろ帰らねぇとな」
「もう帰っちゃうの?またあそびにきてくれる?」
「……さぁな」
「来てくれないならわたしからいく、お兄ちゃんどこに住んでるの?」
「お前には絶対に来れねぇよ」

立ち上がってそのまま玄関へと歩いていくダンテの後をナナは追いかける
突然足を止めたダンテは彼女の顔を見ずに口を開いた

「なぁ…」
「なに?」
「……ダンテって呼んでくれねぇか」
「おにいちゃ「ダンテ」

年上の人間を名前で呼ぶのに戸惑いながらもナナはゆっくりと口を開いた

「ダンテ」

名前を呼んだと同時にダンテに抱きしめられた
彼が今どんな顔をしているのかはわからない

「ありがとな、ナナ」


* * *

ナナの家から出てみれば目の前には自分の事務所があった
一歩一歩足を踏み入れて事務所の中へと入る、自分の机の上に置いてある写真に向けてダンテは口を開いた

「ただいま…ナナ」

ダンテの机の上には成長したナナの姿の写真があった
そう未来ではダンテと彼女は恋人同士だった
だがナナはこの世界にはもういない、数週間前に悪魔に殺されたのだ
彼女を失った悲しみで会いたいと願ったからだろうか?
過去のナナに会うことができた

「また食いたいな……お前のカルボナーラ」





4ダンテにしようか迷ったのですが3ダンテで…ヒロインの両親の写真に向けて謝ったのは娘を死なせてしまったからで…家族を亡くした上にヒロインも亡くしちゃうとかダンテに悲しい思いさせてすみません。次は甘い話を書きたい
約30の嘘
130517
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