玄関で白い煙を吐きながら承太郎は恋人を待っていた
彼女が数時間前に自分の家にやってきて今は母親ホリィに着付けられている
最初は家の中で彼も待っていたのだがそろそろ外にいてもいいだろうと出てすでに30分は待っている
女の支度はどうしても時間がかかってしまう
やれやれだぜ、と再び白い息を吐いたとき玄関の扉が開かれる音が聞こえてそちらに目をやる
「お待たせ…承太郎」
「……おぅ」
綺麗に着飾られたななが照れくさそうに出てきた
その後ろからホリィも顔を覗かせる
「うふふ!承太郎見て!ななちゃんとっても綺麗でしょ!?」
肘で小突く母親に承太郎は眉間に皺を寄せる
彼は行くぞ、と言うと先に歩き出してしまうのだがホリィが声をかける
「ちゃんとエスコートしなきゃ駄目よ!ななちゃん気をつけていってらっしゃいね」
「はい…ありがとうございます」
ホリィに頭を下げてななは承太郎の後を追いかける
彼はちゃんと彼女をサポートできるのだろうか、とホリィは心配そうに見つめていた
普段履きなれない草履にななは足を何度も取られそうになりゆっくりと歩く事しかできなかった
承太郎はどんどんと先に歩いていく、このままでは置いていかれるのではないだろうか
だがその心配も必要はなかった。大きな手がななに差し出される
「見ていて危なっかしいぜ…掴まりな」
「あ、ありがとう…」
大きな手に自分の手を伸ばして握り締める
外でどのぐらい待っていたのだろうか?彼の手はとても冷たかったがすぐに温かくなった
「それとな…なな」
「ん?」
「……似合ってんぜ、着物」
帽子を被りなおしながら言う彼にななは目を細めるとありがとうとお礼を言って微笑んだ
* * *
承太郎は袴似合うだろうけど、本人はめんどくせぇと言いそうなのでヒロインと私服で初詣に行ってるといいですよぉ