ギューと後ろから抱きしめられる。その大好きな感覚はキミ。
『ホンット銀ちゃんはそれ、好きだね』
「透が抱き心地いいんですぅ」
おどけた様に笑う姿も大好きで、離ればなれになるなんて思ってもみなかった。だって、銀ちゃんがあたしを絶対離さないって言ってくれたから。
『帰って…きてない…?』
気まずそうに目をそらす新八くん。神楽ちゃんは泣きそうな目であたしを見た。
「最近やけにイライラしてたネ。透は…何も知らないアルか?」
『えっ、でもここ1週間は万事屋3人で旅行って…』
「旅行なんか行ってないアル!」
初め、意味が分からなかった。
じゃあ、何?銀ちゃんはあたしに嘘をついたの?
ガラガラガラ
呆然としているあたし。
そんな中、聞こえきたのは可愛らしい女性の声と……
楽しそうな銀ちゃんの声だった。
「銀さん!」
焦りと困惑が混ざった声で銀ちゃんの名前を呼んだ新八くんに銀ちゃんはだるそうに言った。
「あー…、ただいま。……それ客?」
銀ちゃんは、あたしの後ろ姿なんて覚えていないんだね。いっぱい抱きしめてくれたはずなのに、その程度だったんだ。
『新八くん神楽ちゃん…あたし帰るね』
「透!待つアル!」
走る足は家近くまで止めなかった。追いかけてくれると少しでも期待したのがバカだったらしい、空は既に橙色に染まっていて影はあたし1人分のものだけ。
家に帰るまでは一滴も零れなかった涙がドアを開けた瞬間狂ったように溢れ出た。
後から後から、あの一緒に帰ってきた女の人は誰だったのかとか嘘をついた理由は何だったのかとかあたしの不安要素が押し寄せてくる。
もしかして、あの女の人とあたしと会っていない間一緒にいた?
大好きな銀ちゃんは、
あたしを裏切ったんでしょうか。
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