たとえ、貴方が私を見ていなくても構わない?
私を通して“誰か”を見ていても構わない?
嫌だ、そんなの。
バカな女なんて忘れて、
私に溺れさせてあげる。
『銀ちゃん…』
酔いつぶれて、テーブルに突っ伏している彼の目は真っ赤に腫れて。普段他人に自分の弱みを見せることなどない彼にしてみれば、よっぽどのことだったということがわかる。
そして、彼の寝言に登場するのは、ついさっきまで一緒に飲んでいた私じゃなくて、知らない女の名前。彼が振られたという女の名前。
『バカみたい。どうせ見た目だけの中身は空っぽな女だったんでしょ』
小さな独り言は誰に聞こえることもなく自分の中で響く。私はそんな女に負けたんだね。
銀ちゃんがその人に抱いてた気持ちが純愛なら、私のこの、銀ちゃんへの気持ちも純愛。私の方がもっと純愛。
勘のいい銀ちゃんだから、きっと私の気持ちに気付いてるはず。それでも知らないふりをして、他の女の話をするなんて、ひどい。それでも私は、貴方からは離れられない。
『どうしたら、私を見てくれる?』
今はいいの。
私が貴方の視界に入らなくても。
将来的に、私が貴方の全てを埋めつくす為にはどうしよう。
『銀ちゃん、銀ちゃん』
まずは貴方を闇から起こして。
「…ん、ふぁぁ…透?」
一番初めに、瞳に映したならば。
『銀ちゃん、私を利用して』
優しく、まるで天使のように。
「…は…?」
頬をくすぐる温かさに貴方が手をのばせるように。
『私が銀ちゃんを慰めてあげる』
そして、泥沼に足をはめてあげましょう。
貴方が私を利用するほど、貴方が私にハマる方向で。
私は貴方の気持ちを利用する。
……これを、純愛と呼んでも、いいですか?
純愛
(私の物差しではかれば、そう)
一度ハマれば抜け出せない、
そんな恋が理想だわ。
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うーぬ…、
どういう心境よ、これ。
甘の神様、私の元へ降りてきて!
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