鬼斬 | ナノ






第二訓
――――――――
「今から部屋に連れてくからついてきてね」

『はい。え、と』

「俺は山崎退。密偵だよ、よろしく」

『よろしくお願いします。俺は、』

「寺川悠でしょ。沖田隊長と互角なんてホントスゴいよ」

『見てたんですか。でも俺なんてまだまだですよ』

「そうかな……あ、着いた」

立ち止まった山崎さんの目線の先には1つの部屋。

『普通に綺麗ですね』

「どんなんだと思ってたの…」

いや、だってチンピラ集団が住んでる所が綺麗だとは思えない。

『連れてきていただいてありがとうございます、山下さん』

「…山崎です」

少しブツブツ呟いてたけどあの人とはうまくやっていけそうだ。

部屋はなんとも殺風景。当たり前なんだろうけど。

しばらくゆっくりしていたら声をかけられた。

「悠」

『あ、土方さん』

「お前の配属が決まった。一番隊だ」

『…え』

「不満あんのか。決まったもんは決まったんだから変えられないけどな」

『はぁ…わかりました』

「で、今から見回りに行ってもらう」

見回りって……ただブラブラしてるアレだよね。楽じゃん。

『じゃあ行ってきます!』

「ちょっと待て」

「俺と行くんでさァ」

来ちゃったよ、この人。

『沖田さんと行くんですか』

「そうですぜ。んじゃ、先行っときます」

頭の後ろで手を組んで、沖田さんは行っちゃいました。

「見回りっつってもほぼ総悟の見張りな」

『…どーいう意味ですか』

「アイツ逃げるから。逃がしたら、罰考えとくわ」

どーいう意味だよ。
何がアイツ逃げるから、だ。私にメリットなんにもないし…。

『早く行かなきゃ』

でも一応は上司ですからね。







『待ってください!』

「歩くの遅せー」

私の前を行く沖田さんは、まだ逃げる様子は見せてない。

「今日は逃げないでやりまさァ」

今日限定らしいけど。











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