第十三訓
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『離して』
震える私の声を彼は嘲笑った。
「大好き大好きって、ウザいくらいに抱き付いてきたのはどいつだ?」
『私は、昔とは違う。それに、貴方も変わってしまった』
「変わったのは蘭、テメーだけだ。昔の仲間を裏切ったテメーだけだ」
大きな杭が深く深く胸に突き刺さる。
裏切ったわけじゃない。
決して。
だけど…、
『私は貴方を捕まえる。大事なものを壊させない』
大好きだったからこそ。
こんな道を歩まないで欲しい。
脳裏によぎる晋助さんは、ぶっきらぼうで毒舌で、だけどそれ以上に優しかった。
『これ以上は…っ』
けれど、今、歪んだ視界に映るのは。
優しい笑顔なんかじゃない。
「なァ、蘭。幕府の犬に成り下がった本当の理由は、俺達を裏切ったんじゃない。……コイツ、だろ?」
あぁ、やめて。
振り回さないで。
お願いだから、
私を自由に 貴方を自由に
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