鬼斬 | ナノ
第一訓
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危なげな足取りで進む青年…否、女は、
『おぉー、やっと着いた…てかもうフラフラだし…』
ドサッ
路地裏で目を閉じた。
「キャァァア!」
「た、助けてくれー」
逃げ惑う人々、その後ろにドヤ顔をして仁王立ちしているのは、もはや警官と言えないだろう者。
「なにやってんだ、総悟」
「…いいとこだったってのに。死ねよ土方」
「よーし、剣を抜け」
「あんな所に人が倒れてらァ」
「無視かァァ!」
真選組の副長と一番隊隊長は、夜の見回りをしていた。まぁこの2人が一緒にいると必ずと言っていいほどトラブルが起こるのだが。
「…ったく、でどこにいるんだ……ッ!あれか?」
「急いで診たほうが良さそうですねィ」
目を向ければ人知れず倒れている者がいた。着ているものはボロボロ。そして痩せこけていた。
「こいつを屯所に運ぶぞ。総悟、手伝え」
「土方さん1人でやってくだせェ」
ドSが言うことを聞かないのをわかっている土方は、1人路地裏に入る。
「……アイツ」
そこから出てくればとめてあったはずのパトカーはなくなっており、またそれを誰がやったのかも明白だった。
『……うぅ…?』
目を開ければ天井が見えた。確か道端でブッ倒れたはずだったんだけど。
「目ェ覚めたか」
横を見れば、瞳孔ガン開きの人がいた。
「ここは真選組屯所だ。てめーが路地裏で倒れてたんで連れてきた。……それに、」
「トシィィ!!女の子連れ込んでるって本当かァァ!?」
話の途中に乱入してきたのはゴリラでした。
「ゴリラじゃないからァァ!」
『スゴいですね。最近のゴリラは人の心も読めるんですか』
「おもっきし口に出てたからな。それに近藤さんはゴリラじゃねェ。人間に進化しきれなかったゴリラだ」
「それゴリラじゃん」
『……言っておきますけど、俺は男ですよ』
ゴリラの話が長くなりそうだったから無理やり切った。それに…男だと思ってもらわないと。
「君、女の子じゃないのか?」
『はい。いつも勘違いされますけどね』
ここが真選組だとわかった以上、なんとしてでも入らなくちゃ。そして女だとはばれないようにしなくちゃ。
『いきなりなんですけど、俺をここに入れてもらえませんか』
「…ハァ?てめーみたいな身元も怪しいし弱そうな奴入れられるか」
『確かに身元を証明できるものはありませんが、腕なら自信はありますよ』
「…トシ、やる気がある奴はいいじゃないか。一度誰かと勝負させてみよう」
「近藤さん……本気か?」
「あぁ」
「……アンタがそう言うなら俺はなんにも言わねェよ」
「ハハ、ありがとうトシ。さぁそうと決まれば君はもう寝たほうがいい。あ、そういえば名前を聞いていなかったな」
『寺川…悠です』
「悠か。俺は近藤勲。ここの局長だ」
「…土方十四郎だ」
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