鬼斬 | ナノ
第十三訓
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「知ってるだろ、鬼斬の蘭」
冗談ではないことは、わかった。
「有名な人斬りだからなァ。てめーらにしちゃァ、敵だ」
鬼斬。幕府官僚数十名殺害。
まだ幼く、……女。
数年前から、パッタリと消えた。
「これを知って、まだ連れ戻すなら好きにしな」
痛いのは、嗚呼、心か。
ドッッカーッン!
爆音が耳に届いて、それから体が動いたのはしばらくしてからだった。土方さん達が到着したらしい。その時には、高杉は悠を置いて消えていた。
「総悟!」
「すいやせん。高杉を逃がしちまいやした」
「お前それより、この女…悠だよな?」
「……後で、土方さんと近藤さんに話さねェといけないことがありまさァ」
少ししてから深刻そうに頷いた土方さんは、また、隊士達の中へと戻っていった。
純白の悠は、
本当に血に濡れて汚れているとは思えなかった。
「しっかりとどめもさしてきただろうな?」
声は出さずに首だけを動かした。
どれくらい前からこの状態なんだろう。私は、血と憎悪に汚れていて。
涙で洗いながせられたなら。
何度願っても、消えるはずなんてない。だから途中から、止めることにした……考えることを、悩んで病むことを。
その闇へ手を差し伸べてくれたのは、それから少し経ったある日のこと。
「蘭は俺が守ってやる」
そうだった。
貴方はそう私に言ってくれたんだ。
ありがとう。ごめんなさい。
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