鬼斬 | ナノ
第十三訓
――――――――
下品なネオン、大きな文字で“桜瀬”と書いてある。
……ここに、いる。
土方さんと近藤さんに自分の現在地を連絡したあと、隊士の1人が駆け寄ってきた。
「沖田隊長!……どうやらここには高杉がいるようでして」
…最悪だな。
そして、今までの憶測はほぼ確信に変わる。
「そーかィ、てめーらはそのまま同じ場所で見張ってろ」
「はい!」
悠は高杉となんらかの形で繋がっている。
しかも、高杉の方が相当アイツに入れ込んでいる。…ったく、悠は何者なんだ。
「助けても、そのあとが大変だねィ」
ま、助けるのは当たり前だが。
その時、いきなり無線機から近藤さんの声が聞こえた。
《総悟!俺達ももう少しでそこに着く!だから、先に一番隊が突入しといてくれ》
「わかりやした、…なるべく早くお願いしやす」
《あぁ、わかってる》
近藤さんの声が消えてから、隊士を見回した。
「さァ、…行くぜ」
気分的にだが、
どうやらアイツに俺は入れ込んでるらしい。
だがそれも、別に悪くはねーか。
「高杉、覚悟しな」
誰にも聞かれることのない独り言を吐き出して、店の中に入っていった。
「雑魚ばっかじゃねェか…」
入った途端たくさんの攘夷浪士が襲ってきたが、そのほとんどが最近刀を持ったばかりらしい素人。おそらく捨て駒、そして足止め。奥に行くほど大物が出てくるのだろう。
「オイ、任せたぜィ」
この場は部下達に任せ、先を急ぐことにした。…しかし、俺の予想は外れることになる。
「…なんで、廊下ががら空きなんでィ」
大物は勿論、雑魚ですら1人もいないのだ。逆に不気味で進みずらい。
しかしそのまま走っていると、一際豪華な襖が目についた。
おそらく……。
prev next
56/58