鬼斬 | ナノ






第十二訓
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「……テメーか?店の前にいた怪しい女は」

広い部屋にひとつだけある大きな窓から、これまた大きな月が見える。部屋の明かりはそれだけらしい。つまりは部屋は見えないだけでもっと広いのだろう。

そんな怪しい空間に、
男が1人。

私よりも十分貴方の方が怪しいですよ。って言ってあげたいくらい。

『私は決して怪しい者ではございません。此方で、ぜひ、雇っていただきたかったのでございます』

「無線機を持って、なァ?」

ククッと男は笑った。

「幕府の犬に女なんざいなかったはずじゃなかったか?それとも、女装か」

暗くて、よく見えない。

短刀をグッと強く握って。

「俺達のじゃじゃ馬姫はどこ行った?」

ガシャン、音を立てて短刀が床に落ちた。

「鬼のように斬り倒してゆく様に、仲間をもが恐れたらしい。一人前の女でもないガキが、血を被ると美しい姫だなんて言う馬鹿もいた」

ススス…、衣擦れの音がする。

「姿を消してもなお、伝説化したソイツは鬼斬なんて名を持って俺達を振り回したもんだ」

顎に添えられた手に、

「そんなガキも今じゃ一人前とはいかなくても、女。綺麗になってるだろうたァ思ってたが…」

思わず身震いした。

「綺麗になったな、蘭」

『……高、杉…晋助』

「えらく他人行儀だなァ?昔みてーに、晋助さんって呼ばねーのか」

私の命の恩人で、大切で、大好きだった人、そして今は敵の人。

なにより、今は、

『…会いたくなかったです』

「俺は、会えて嬉しいがなァ?」

私が彼に抱き寄せられたのと同時刻、

「土方さん、悠が捕まったって本当ですかィ?」

「……総悟が、珍しいな」

「何がでさァ?」

「心配か?アイツが」

「…で、行くんでしょう」

真選組は動き出していた。








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