鬼斬 | ナノ






第十二訓
――――――――
「……悠?おい、どうした」

いきなり、途切れ途切れだった話し声が途絶えた。

「返事しろ!何かあったのか!」

返事が返ってこいと願う。だが、最後に聞こえたのはおそらく無線機が潰されたのであろう音。

「くそ……」

俺は近藤さんの所へ向かい、

「悠が、人質に取られた」

そう告げた。













『………うっ、痛ぁ』

冷たい床に私は寝ていた。
殴られた頭には乱暴に包帯が巻いてあり、血は止まっている。

『ここどこ』

……任務失敗しちゃった。

攘夷浪士に捕まって、多分私は桜瀬って店の人目に付かない場所に放置されてるんだろう。

『怒られる、拳骨何個だろ』

他人から見ればおかしな心配かもしれないけど、アレはかなり痛いから。

生きて帰る自信は勿論、ある。
迷惑はかけたくないけど、きっと任務を失敗した時点でかけてしまってるから。

「女、来い」

襖が開かれ入ってきたのは、がっしりとしたガタイの男。

完璧、攘夷浪士だよ…。

一応短刀は持っているけど、今ここで斬ると一気に私は不利になる。まぁ、今でも不利なんだけど。

大人しくその男についていくことを決めた私はのっそり起き上がった。

『どこに行くの』

「なぜお前なんぞに教えねばならない」

目からレーザーが出るほどに睨んでやった。

結局何も知らされないまま廊下を歩き続け、着いたのは豪華な装飾が施された襖の前。

「入れ」

私は何を相手にするんだろうか。まさか……鬼斬ってばれてないよね。

短刀をばれないように確認して、決意を決めて中に入る。

広い部屋の中には、1人の男が此方に背を向けて立っていた。








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