鬼斬 | ナノ






第九訓
――――――――
『おっ妙ちゃぁーん!!』

私は志村家の前で大きな声を出した。

あ、いけね。今は外だから男っぽくしないと。

「あら、蘭ちゃん。上がってちょーだい」

なんか自分でも名前が2つあるのってこんがらがるな。

『銀さんから電話がかかってきたんですけど…何かするんですか?』

「えぇ!!見ればわかるわ」

私の質問に対してお妙ちゃんはとても楽しそうに答えた。














『……何ですか、これ?』

「見ての通りメイク道具よ!」

『…何、するんですか?』

「そんなの、」

こういう場合は不吉なことしか起こらないよなぁ。

「蘭ちゃんを綺麗で可愛くするのに決まってるじゃない!!」

…決まってるんですか。

「いいわよね?」

期待と裏に隠せきれていない黒いオーラを見せられちゃ断れるはずないじゃないか。

私は口を閉じたまま、首を縦に振ったのだった。











下地からアイメイクや口紅、チークなどが私の顔に施されてゆく。

私はメイクなんてほとんどしたことがなかったから、とても新鮮。

「うん、できたわ」

お妙ちゃんは私に笑顔を見せて鏡を差し出した。

不安ながらも鏡をそっと覗きこむ。

『わ…』

いつもとは大分違う自分。女の子を実感した。

「蘭ちゃん、綺麗よ」

『そ、そんな…でもありがとうございます』

――バン

ほんわかした雰囲気の中、襖が突然開いた。

「蘭は…―、」

入ってきたのは銀さんで、私を見たと思ったら停止。

『銀さん…?』

「…蘭だよな?」

「そうですよ」

銀さんの質問にはお妙ちゃんが答えた。

「…マジでか。女ってこえーわ」

『何気酷いですよね、それ』












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