鬼斬 | ナノ
第八訓
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「ふんばれオイ。絶対死なせねェから。俺が必ず助けてやるからよ」
周りには死体がゴロゴロと転がっている。
その中央辺りに俺は、仲間を背負って歩いていた。
「捨てちまえよ」
死体の中の骸骨が俺に直接話しかけてくる。
「てめーには誰かを護るなんてできっこねーんだ」
言うな。
「アイツだって、てめーのせいで責任感じちまったんだぜ?」
言うな言うな。
「てめーは無力だ。もう全部捨てて楽になっちまえよ…お前に護れるものなんて何もねーんだよ!!」
――ガバッ
辺りを見回して、今までのが夢であったことが分かる。
ガラッ、襖が開いたと思ったらヅラがいた。
「ガラにもなくうなされていたようだな…昔の夢でも見たか?」
「ヅラ?なんでてめーが…」
そこで思い出した。
フラフラで何も見ていないような目をした神楽に新八、俺を見て泣きそうな顔でごめんなさいと言った蘭。
ガバッと……、
起き上がれなかった。
「無理はせぬがいい。左腕は使えぬうえ肋骨も何本はいってるそうだ」
そして、ハム子の話、"転成郷"と呼ばれる麻薬の話、"春雨"の話をされた。
「春雨は……貴様がそれほど追いつめられる位だ…よほど強敵らしい。……オイきいているのか?」
ヅラの話を聞いてる暇はねェ。
「仲間が拉致られた。中には、蘭もいる。ほっとくわけにはいかねェ」
「!!――蘭もいるのか。しかしその身体で勝てる相手と?」
「"人の一生は重き荷を負うて遠き道を往くが如し"昔なァ徳川田信秀というオッサンが言った言葉でな…」
「誰だ、そのミックス大名!家康公だ、家康公!」
「最初に聞いた時は何を辛気くせーことを、なんて思ったが。なかなかどーして年寄りの言うこたァバカにできねーな…」
俺は自然と話していた。
過去の仲間、現在の仲間を思い浮かべながら。
「あいつらがいねーと歩いててもあんま面白くなくなっちまったからよォ」
「……仕方あるまい。お前には池田屋での借りがある、そして蘭がいるなら尚更だ。ゆくぞ」
「あ?」
「片腕では荷物などもてまいよ。今から俺がお前の左腕だ」
『……ぅう…っ!』
まだ若干鈍い頭を叩きながら、私はムクリと起き上がった。
幸い周りに天人はいない。だけど神楽ちゃんも新八くんも見当たらない。
『とにかく…捜さなきゃ…』
私はこういうものに少しは抗体があるからいいけど、あの2人には動くのもキツいはず。
――守るんだ
汚れた私が出来ることをしなければ。
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