ライバルの始まり
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今思えば、始まりで悪かったのは確かにあたしなのだけれど。


アレンとの出会いは正直言ってかなりショボい。一切運命的ではない。

美容室からの帰り、気分はとても良くてその時はなんだか親切なことをしたくなったのだ。ふと、前の方を見たら、白い髪のおじいさんが大きな荷物を持って歩いているものだから、親切心が働いた。それが、色々な間違いだったと気がつくのは少しあと。

『…おじいさんっ』

走り寄って声をかけても、おじいさんは振り向かない。もしかして、おじいさんは耳が悪いのかもしれないと思い、正面へ回った。

『おじいさん、荷物重たいでしょ?持ってあげ……、あれ。若い…』

「……はい?」

おじいさんだと思い込んでいた、白髪の男性は若かった。

『……、すみませんでしたっ』

すごい失礼なことをしたと気付き、腰を90度に曲げる。すると、上からクスクスと笑い声が聞こえた。

「クス、いいですよ全然。それにこんな髪だから慣れてますし」

まさに、王子様だと思った。
顔よし性格よし、とか最高じゃんか!

『同い年くらいですよね?』

「何歳ですか?」

結局その後、同い年で同じ高校だということがわかり更に仲良くなることが出来た、のだけれど……。

『は、まさかアレンくんって…、あのアレンじゃ……』

変なことをあたしは思い出してしまったのだ。

……女遊びの激しい男の子を。

少し詳しく話すと、ニコニコと笑いながら彼は言った。

「はい、それが?」


…まぁこんなのが、
あたしと白髪の始まりかな。

え?わからない?
うーん、つまりはね。

あたしとアイツは合わないってことだよ。













『なんでリナリー様はそんな冷めた目をしてらっしゃるの』

「ごめんね、名前。最後のこっちに聞いてくる仕草に少しイラッとしたわ」

『あ、まじか』

説明する力がないあたしは、両手を使って身振り手振りで頑張ったんだけど、あまり伝わらなかったらしい。

「名前は女遊びが激しくてしかもそんな態度を取ったアレンくんが気に食わなかったのね」

訂正、理解してくれていた。さすがリナリー。

『そーなの、王子様願望のあたしには絶対理解出来ないタイプだな』

ため息をつきながら言うあたしに、リナリーは苦笑いを返した。

「でも、名前がアレンくんのどこまでも見れているかはわからないでしょ?」

『へ、…どういう意味…?』

「今はわからなくてもいいんじゃない」

難しいことを言ったリナリーをじっと見つめても答えは返ってこなかった。

あたしは、アレンのどこまでを見ているんだろうね。






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