狼まであと何秒?
名前が部屋から出ていった後、突然扉が開いた。

「なんでィ、土方さんか」

「悪ィな、俺で」

俺の寝ている側まで寄ってきた、土方さんに珍しく相談じみたことをする。

さっきの名前の言動など、気になることを全て話した。

「あのなぁ…俺はお前がそんなに疎いとは思わなかったわ」

「は?馬鹿にしてんですか」

「まぁ、違わなくはないな。ともかく…お前は名前んとこに行って想い伝えてこい」

また、は?と思った。だって名前は俺のことなんて何とも思っちゃいないはず。玉砕覚悟で行けってことか?

そう伝えたら、更に呆れられた。

「なにも玉砕覚悟とは言ってねーよ。総悟、お前が想いを伝えたら万事全てが解決すんだよ」

全て解決…か。

「アンタのこと信じていいんですね?」

「あぁ、」

まだまた痛む身体、それをズルズルと引きずりながら部屋を出ていく。後ろから頑張れよと聞こえたがなんだかアイツの言うことに従ってるのが嫌で無視した。

「痛ってーや」

ちょっとは期待したけれど、本当にそうなんだろうか。名前も俺を想ってくれてるのか?

しばらく歩いていると、少し扉が開いている部屋があった。覗いてみると……いた。

部屋の真ん中にうずくまった名前が。

決意を決めて中に入る。物音にビクッとした名前は真っ赤に腫らした目で俺を見た。

『…っ』

俺は一言も発しず、名前の目の前でしゃがむ。

そして、優しく抱き締めた。

『……なん、なんで…っ』

「話、聞いてくだせェ」

目を合わせて。

「俺ァ、ずっと前から……名前が好きなんでさァ。名前が他の男に笑い掛けるたびに嫉妬するほど」

いとおしい、とても。

「さっきは、嘘つきやした。まさか…名前が泣くとは思ってなくて。……いきなり抱き締めて、悪かった」

自分の気持ちを全部とは言えないけど、伝えて。すっと手を離そうとした。

「…え」

『離さないで』

名前が俺の腕を掴んでいた。

『私も、前から好きだった』

ずっとずっときみの口から聞きたかった言葉。

柔らかそうな名前の唇にそっと自分の唇を重ねた。

『私、沖田さんからはただのイタズラ相手としか思われてないのかと思ってて』

「好きな子ほどいじめたくなるアレでさァ」

『ふふ、』

「もしかして、いじめられるのも好きだったのかィ?」

耳元でやけに低い声をだして、また、イタズラをしてみた。

そうしたら、見事に名前の顔が真っ赤に染まるものだから。



狼まであと何秒?


きみだけが、俺の心を乱すんだ











+アトガキ+
『無防備なきみに恋をする5題』一気に書き上げちゃいました!めちゃくちゃ楽しかった(^-^)自分の苦手な甘でしたが、やっぱりいいですね。甘いお話は和むわー。それにお借りしたタイトルがまた……いいっ!

では、ここまで読んでくれた名前様ありがとうございましたm(__)m

[ 5/5 ]


mokuji