眠るきみに秘密の愛を
あーあー、
また………無防備に。
たまたま女中で一番年齢の高い百合子さんに会ったのが、名前のこの姿を見るきっかけになったのだった。
「名前ちゃんがどっかに行っちゃったんですよ。沖田さん暇なら探しに行ってくれないかねぇ?」
名前なら、とすぐに返事を返してすぐに探しに出た。しばらく探してもなかなか見つけられなくて、ようやく寝転ぶ名前を見つけたと思ったら探し始めてから30分も経っていた。
「…起きなせェ」
…起きない。それに本気で起こそうとは思っていなかった。こんな幸せそうな寝顔を見て無理矢理揺すり起こすなんて出来なかった。
寝ている名前の隣に腰を掛けて、まじまじと顔を見る。
長い睫毛にふわふわな髪。頬はほんのり桜色に染まっている。
……唇はぷっくりと柔らかそう。
「……っ」
思わず自分の考えてることに赤面してしまった。
「ホント…名前のことになると、いけねーや」
だが、こんな自分も嫌いではない。暖かい、姉上と一緒に武州で暮らしていた時の様な気持ちに包まれる。
名前がぐっすりと寝ていることをいいことに、前髪が横に流れて開いている額にそっとギリギリ触れるくらいのキスをした。
『…ふふ』
「……寝てやすよね?」
くすぐったそうに笑った名前に焦ったがちゃんと寝ているようなのでそっと胸をおろした。
触れた名前の肌は温かくて、伝わってきた熱はもっと俺を熱くした。
「ダメ…でさァ。もっと触れたくなっちまう」
ぽかぽか陽気と隣にいる名前の力で、なんだか眠気が襲ってきた。
自分が女中の百合子さんに何を頼まれたかなんてとうの昔に頭からは消え去っていて。ちょっとくらい…と名前の肩に体重を掛ける。
いつものアイマスクを付けて、夢の中へ落ちていった。
眠るきみに秘密の愛を
『……ん?……わわっ、沖田さん!?』
「…ふぁー、起きたかィ?」
『お、起きましたけど…なんで沖田さんが一緒に寝てたん…あ、』
「どうかしやした?」
『百合子さんに頼まれてた掃除忘れてたーっ!』
「あ、そういや俺も名前を探してきてくれって言われてた」
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