――トントン
『失礼します。土方さん。この書類、』
「ちょ、ちょっと待て!!」
『はい?』
私はようやく書き終わった書類を提出するために土方さんの自室に出向いていた。
だけど……、
『そ、うだったんですか。あ…はい、なるほど。…大丈夫ですよ!俺、口かたいんで!というか、すみません!!』
――バタバタバタ…
「しね、土方」
「てめーがな」
あの2人がまさか、あんな関係だったとは。
ケンカするほど仲が良いって言うしなー。
『でも、これから顔合わせづらい…』
言うの忘れていたけど私が入ったときの光景とは、辺りには書類が散らばっていて沖田さんの上に土方さんがいるという……なんとも不純なものでございました。
見てしまったのを今更後悔するのは遅いけど…アレはちょっと……。
廊下の途中にハゲと地味がいたけどそれどころじゃないのでスルー。
あ、ゴリ…ゲフンゲフン近藤さんも見たような見なかったような?
色々考えていたら、良いことを思いついた。
『そうだ!皆が知ってればいいじゃんか!』
そうすれば、私だけが居心地の悪い気持ちをしなくてもすむ。
それにどーせバレるだろ。
私はスピーカーのある部屋に全速力で走った。
『沖田さんとォ、土方さんはァ、恋人同士でーす。皆さん2人の邪魔をォ、しないであげてください!』
我ながら中々いいアイデアだと思う。
2人的にも真選組公認の方がきっと良いに決まってる。
すると、ドドドと、ものすごい音が聞こえてきた。
『あ、土方さんに沖田さんだ。ちゃんと皆さんに報告しときましたよ』
「てめェ、首ちょん切られたいのかィ?」
『は…?なんのことですか』
「今、なんつった?」
『お2人が付き合ってるってこと。きっと皆さん公認してくださると思いますよ』
「んなこたァ公認してもらわなくていいんだよ!!」
「どっからぶった切ってやりやしょうかねィ?」
ひぃぃぃいい!!
目がマジだァァ!!
『で、ですが!2人はそういう間柄なんじゃ!?』
すると、2人は呆れた顔で見てきた。
「んなわけねーだろ。あれは事故だ」
『事故?』
土方さんの話によると…
「土方さん、書類終わりやしたぜ」
「…総悟か?珍しいな、明日槍でも降るんじゃねーか?」
「俺だって仕事くらいしまさァ」
裏で沖田がニヤリと笑っているのにも気づかず、土方は感心するように頷いた。
「それでこの書類、」
沖田が土方に書類を手渡した、のだが。
――ベタ…
「……」
「ま、頼みまさァ」
よく見れば沖田は紙の端を持っており、紙の裏には大量ののりでベタベタ。
「…そ、総悟ォォオ!!」
ここからは大体予想がつくであろう鬼ごっこが始まるのだが、問題はここからだった。
なんと土方が床き置いてあった書類を踏んで滑ったのだ。
「……あ」
間抜けな声を出しながら土方は沖田の上に倒れてしまった……。
「とまぁ、こんなもんだ」
『……そうだったんですか。…チッ』
「なんで舌打ち!?」
「早く訂正しなせェ。俺ァ、今イライラしてるんでねィ」
沖田さんはそう言いながら、刀を手入れし始めた。
『さっき言ったことは全て俺の勘違いでしたァァア!!すみませんでしたァァア!!』
おもいっきり謝罪して、そーいえばと思い出した。
土方さんに提出する書類、まだ出来てないとこあるんだった。
私は未だ口論している2人を置いて自室へ向かった。
「(そーいやァ、なんで俺絶対アイツに勘違いしてほしくないって思ったんだ…?)」
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