初めてモデルをしてから、2回目までは2週間空いてしまったが、その後は、週に1、2回のペースでシズちゃんのアトリエを訪れた。
俺がシズちゃんのモデルをする時間を意図的に空けるようにしたのが大きな原因だ。

回数を重ねるごとにシズちゃんに描いてもらうのが楽しみになった。

デッサンしかしない日もあれば油絵の具をのパレットを片手に何時間も描く日もあった。
衣装も普段着の日もあれば、スーツを着ることもあったし、ジーンズに上半身裸だったこともあった。

シズちゃんが何を描きたいのか俺にはわからなかった。シズちゃんにもはっきりとはわかっていなかったんだと思う。

ただ一つシズちゃんがこだわっていたことがあるみたいだった。
光だった
それは窓から差し込む光だったり、蛍光灯の光だったり、鏡に反射する光だったり。
夕焼けの光が邪魔だと言って夜になるまで何もせずに待つ日もあれば、この光量がいいと言って慌てて描き出す日もあった。
強すぎる光は避けているようだった。
暖かい日差しややわらかな光を求めている傾向にあった。

そんなことがわかってきた頃。
ちょうど、コンクールの期限も近くなっていた。

シズちゃんの納得出来る作品が描き上がった。

シズちゃんは連日の作業で食事も睡眠もロクにとれていなそうな死にそうな表情で、今日は作業をやめないかと持ちかけたような日のことだった。


作品は最高だった。
今までのどの作品よりもいい、と確信した。
柔らかな日差しの中に佇む俺は一人きりだったけれど独りではない。そんな温かい気持ちになれる絵だった。

「お祝いしなきゃね」
「お祝い?」
「受賞のお祝い」

シズちゃんは苦笑した。

「賞が取れると決まったわけじゃないだろ」

こんなにいい絵なのに自信がないなんて。

「取れるに決まってるじゃない。俺がモデルなんだよ?」

素直に誉めるのは少し癪だから

シズちゃんはそれをわかってか微笑んで俺の頭を撫でた。
単細胞の癖にそういう機微に無駄に鋭いんだから

でも、今日はめでたい日だから。
俺は文句を言わないことにした。


20110119
 


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