俺と彼女はカルガモ親子 | ナノ
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気づいたこと




藤真に近づくなと言われ、名字はその言葉通りに今度は俺の近くにいる事が多くなった。
今日も午前の授業が終われば、弁当を片手に教室の入り口から少しだけ顔を覗かせている。


「悪いが今日は学食でも構わないか?」
「はい・・・」


ここ最近は、名字と中庭のベンチで昼食をとることが多かった。初めはおどおどしていた彼女も、俺との会話は前よりも(気持ち)詰まらなくなっていて。少しは俺に慣れてくれているんじゃないかと思い始めていた。



「よう花形!・・・あれ、名字と一緒なのか?」
「こ、こんに、ちは・・・」
「ああ。高野は一人か?席なら空いてるぞ」


通りかかった高野は俺たちが二人でいる事に少し驚いていたものの、それについては特に触れずに少し離れた席の方を指差した。


「長谷川がいるんだけど、先に食ってるから行くわ」
「そうか」
「じゃあな、名字」
「・・・は、い」


高野ももちろん彼女がこんなだと知っているから、思いっきり目を逸らされていても気にする様子はなかった。


「俺には慣れたのに、高野とかはまだ無理か」
「う・・・ごめんなさい」
「謝らなくていい」


俯く名字の頭を軽く撫でる。そうすると、彼女は顔を上げてくれるのだ。


「さ、残りも食べてしまわないとな」
「はいっ」


元気良く返事をすると、残りのおかずを美味しそうに食べだした。
俺が名字について新しく気づいたのは、意外に食い意地が張っているということだった。



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