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インプリンティング
「名前、お前今日から俺に近づくな」
「・・・えっ?」
「いきなり何言いだすんだ藤真」
目に涙を浮かべて固まっている名字を気にしつつ、藤真にどういうつもりだと聞き返す。
「一向に人見知りが治りそうにない」
「それ、は・・・だって、」
俺は内心で、確かにその通りだと思った。だからと言って、いきなり近づくなってのは彼女には酷すぎやしないか。
「何のために刷り込みしたか分かってんのか」
(・・・刷り込み?)
名字の頭に手を置いてその顔を覗き込んだ藤真。
「いいか?俺だけと接してたって意味ないんだよ。他のやつにも慣れないとさあ。せっかく最初に花形に会わせたんだから、こいつにも頼れって」
「・・・ぐす・・・う、うん」
「よし。いい子」
藤真はその返事に納得したのか俺に向き直ると「じゃ、任せた」と言ってさっさと自分の教室に帰ってった。
・・・俺と彼女を残して。
「花形しゃ・・・さん」
勇気を出したんだろう、噛みながらも涙を堪えて俺を見上げていた。
「お昼、ごはん・・・一緒に食べてくれ、くれますかっ」
その必死さに、顔には出さないが内心で思わず笑ってしまう。
俺はこの子が安心できるように、出来るだけ優しく「どこで食べたい?」と、問いかけた。
インプリンティング=刷り込み