俺と彼女はカルガモ親子 | ナノ
( 78/80 )

俺と彼女は




「なんだよ、お前らいつの間に!」
「見せつけてくれるぜ」


あの1年生がいなくなってすぐ、揃って満面の笑みで近付いてきた高野と永野。


「・・・藤真が見たら何て言うだろうな」


俺が名字を抱えたままなのを見て、やれやれといった顔をする長谷川。
他の部員もちらほら集まっているようで、名字は顔を真っ赤にして俺から離れた。その慌てように皆が笑う。

長谷川に苦笑いを返しながら、そういえば藤真はどこだと尋ねると「あっちだ」と目線で促される。その場所に目を向ければ、大勢の女子に囲まれてしまっている藤真がいた。揉みくちゃな状況に自分の顔が引き攣るのが分かる。


「ちょっと目を離した隙に・・・助けなくて大丈夫か?」
「もうそろそろ抜け出してくるだろ」
「それにしても、やっぱ藤真の人気はすげーよな」
「まったく羨ましい・・・!」


思い思いに言いたいことを口にする中で俺は、ふと名字を見た。以前、決勝リーグの会場で藤真が女の子に握手を求められたときは、少なからず妬いていたが。今はどうなのだろう。

彼女を見ていると、特に藤真を気にした様子もなく自然だった。俺と目が合えば何度か瞬きをして、逸らさずにいると少し照れる。その反応に笑った俺を、困った様子で見上げていた。




「おい花形!名前!付き合うのは許したけどな・・・!」


やっとのことで女子達から抜け出してきた藤真が、俺に向かってビシリと指を突きつけた。ボロボロの状態なせいであまり威厳はない。周りの連中はニヤニヤしながらこちらの様子を眺めていた。


「俺の前でいちゃつくなっての!」


別にいちゃついているつもりは無かったが、それを言うともっと煩くなりそうなので素直に頷いておいた。
「ていうか、俺を差し置いて彼女作るなんて・・・」と呟いているが、お前がその気になればそんなものいくらでも出来るだろうと内心で突っ込む。


「・・・悪かったよ、オニーサマ。お前の妹は俺が大事にするから。頑張って彼女でもなんでも探してくれ」


そう言って、べ、と舌を出せばそれを見ていた名字がクスクス笑っていて俺もつられて笑った。そんな俺たちを睨みながら、でも次の瞬間には口元を緩めている藤真。


「花形の癖に生意気だ!」
「言っとくが、俺たちをくっつけたのはお前だぞ」


小さな子供のように駄々をこねる藤真を名字と一緒に宥めながら、これは先が思いやられるな・・・と二人揃って肩を竦めた。


(最後にバスケ部で撮った写真では、名字の隣は藤真に取られてしまった)


fin.
14/08/01〜16/10/14


PREVNEXT


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -