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いつの間にやら
文化祭が終わり、お祭り気分はすっかりどこかへ去っていて。外を歩けば顔に冷たい風が当たって、いよいよ冬が始まろうとしていた。
「もうすぐだな、予選」
「・・・ああ」
外は寒いからと最近は食堂で昼飯をとることが多い。生徒たちの考えることは大体同じでいつも混み合ってはいたが、不思議と俺たちが席に困ることは無かった。
「ホント、あっという間だよ」
しみじみとそう呟くと、うどんを一気にすすった藤真。その隣には、藤真と同じようにうどんを食べる名字がいる。いつもは弁当の彼女には珍しく思えた。
「武里と陵南・・・この2校を倒して、海南と決勝だ」
目をスッと細めて遠くを見ている藤真は、監督というよりは選手の顔をしていた。
本来はそれで合っているんだが、うちのバスケ部の都合上いつもそうはいかない。
「気合入れねーと」
「そう、だな」
「・・・」
それを聞いていた名字は、ずずずと小さく音を立てただけで。やけに静かな様子を疑問に思わないでもなかったが、俺が話しかける前に予鈴が鳴ったので何も言えなかった。
選抜予選まで、あと少し。