俺と彼女はカルガモ親子 | ナノ
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よく分からない




名前が風邪なんて珍しいんだぜ、と藤真の言う通り、名字は慣れない高熱になかなか苦戦しているようだった。朝練を休んだ日から数日が経った今日も、彼女が学校に来ることは無かった。



「まあ・・・それなら体育祭に来られないのも仕方ないか」
「どっちにしろ名前はこういう学校行事は好きじゃないんだよ。昔っから」
「へえ・・・」
「むしろ今日に関しては、休めて喜んでるだろうぜ」


次のクラス対抗リレーに出るため、同じアンカーの藤真と待機場所で並んで座る。クラスが違うので一応対戦相手ではあるが、俺と藤真は行事に盛り上がるタイプでもないからあまり緊張もせずに名字について話していた。

ピストルの音と同時に第一走者がスタートしても、俺たちは周りほど熱くなったりはしない。

(・・・変にやる気を出して、バスケ以外で怪我とかしたくないしな)



「あのさ、花形」


第三走者にバトンがまわり、次はいよいよ俺たちの番という時。藤真が俺に向かって口を開いた。


「前から聞きたかったんだけど」
「・・・なんだ」


先にバトンを受け取ったのは俺たち以外の二人。そのすぐ後に来たそれぞれのクラスメイトはほぼ横に並んだ状態で、俺と藤真は同じタイミングで走りだした。


「はぁっ・・・俺の、勝ち」


先に走っていた奴らは抜き去ったものの僅かの差で藤真に負けた俺は、額に流れた汗を拭いながらさっきの話の続きを問うた。


リレーで一着になってニヤリと笑っていた藤真が急に真面目な顔になったので、何を聞かれるのかと少し身構える。

藤真は俺を見上げると「お前名前のこと好きなの?」と聞いてきたので、いきなりのことに驚いた俺は整いかけていた息がまた詰まった気がした。


「もちろん恋愛的な意味でな」


そんなもの付け足さなくても分かってるよと心の中で言い返す。それは確かにここ最近俺の中でずっと燻っている問題で、自分でもまだ答えが出ていなかった。


「・・・さあな。よく分からん」
「ふーん?」


俺がそう言えば、視線を外して背を向けた藤真。
どうして急にこんなことを?と探るように見つめてみたが、その後ろ姿からは何の感情も見出せなかった。



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