俺と彼女はカルガモ親子 | ナノ
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ごくり、と




「藤真」


花形に呼び止められたのは移動教室の合間で、一人で廊下を歩いてる時だった。


「昼なんだが、悪いけど名字と先に食べといてくれ」
「それはいいけど。何かあるのか?」
「・・・ちょっと人に呼ばれててな」


(ふーん・・・?)


何気なく聞いたそれに花形が視線をそらして答えたもんだから、こいつにしては珍しいなとその時は思っていた。



「どうして・・・花形さん、いないの?」


昼休みになり、花形の教室の前にいた名前を引っ張ってきていつもの中庭で弁当を広げる。名前は不安げな顔をしていて、なんとなく面白くなかった俺はその頬をツンと指でつついた。

(・・・やらけー)


「健司くん?」
「・・・お前さ、ホント花形のこと好きだよな」
「うん」


即答した名前の頬を、今度は軽くつまんだ。予想通りよく伸びるそれで遊びながら今朝の花形の様子を教えてやる。


「呼び出しされたんだと。ありゃたぶん告白だな」
「・・・えっ!」


花形のくせにと思わなくもないけど、あいつ結構モテるんだよな。


・・・ま、俺ほどじゃないけど。



「なに、拗ねてんの?」
「む・・・」


膨れっ面で弁当を食べる名前が、自分の親友のおかげで以前よりも色んな感情を顔にだすようになって、嬉しいやらどこか悔しいやら。


(こいつにとってはいい事なんだろうけど・・・)


最近は寂しい気持ちになることが多いぜ、なんて考えながら、その難しい感情を手に取ったペットボトルの水と一緒に飲みこんだ。



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