俺と彼女はカルガモ親子 | ナノ
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自分に正直に




「あーあ、今回はうちの負けです」



ゲーム終了の笛が鳴り、整列した選手たちが互いに礼をした。

結果は辛くも翔陽の勝ち。藤真が出場していればと考えると、うちにはもう少し余裕があったともいえる。まあ、陵南はすでに3年が引退しているから妥当な結果だろうと俺は一人納得していた。




陵南のメンバーが着替えを済ませてそろそろ帰るという頃、長身の男がぬっと俺の隣に立った。


「花形さん、今日はどうもでした。勝つつもりで来たんですけどね」
「・・・陵南は新チームになって日が浅いからな。翔陽(うち)が負けるわけにはいかないさ」


すっと差しだされた手に自分の右手を重ねる。軽く握手をしてからほどくと、仙道は少し眉を下げながらその手を今度は頭に持っていった。


「藤真さんも引っ張り出せなかったし」
「そうそう出ないよ。あいつは」


はは、とうっすら笑う仙道は、少し離れたところにいる藤真の方を見やってから、もう一度俺に向き直った。


「花形さんにも完全に抑え込まれましたしね」
「ああ、まだまだお前にはゴール下で好きにさせない」


今日の練習試合、仙道がドリブルで切り込んできたときもポストでパスを受けたときも、そう簡単にはプレーをさせなかった。センターとして守るのは当然だが、妙に名字を意識している仙道に、負けるものかと思っていたのも事実だ。

(・・・我ながら、大人気ないとは思う)


「悔しいんで、またリベンジします」


次の試合までにこの男はまた格段に上手くなっているんだろうなという予感がして、俺もつい口角が上がった。



「・・・ところで、花形さんに一つ聞きたいんスけど」
「ん?」


改まったその様子に俺は軽く首を傾げて、何を聞かれるのかを待った。


「藤真さんと名前ちゃんて付き合ってたりします?なんかずっとベタベタしてるんですよね」
「・・・」


そう言いながら二人の方を眺めている仙道に俺はどう答えるべきかと迷う。ここでイエスと言っておけば、こいつは名字を気に掛けなくなるんじゃないか。今後を考えれば、それが一番丸く収まる方法だろう。



「いや、付き合ってない」


考えとは裏腹に、俺の口をついて出たのはその一言で。

「しまった」と一拍遅れて後悔する。それなら良かったと意味ありげに微笑む仙道を見て、俺は心底自分に呆れていた。


(・・・嘘でも認めたくなかった、のか?)



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