俺と彼女はカルガモ親子 | ナノ
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うちの子に近づくなかれ




「あ、名前ちゃん」
「うっ・・・」


(・・・なるほど、仙道か)



陵南との練習試合当日、田岡監督に引率されてやってきた選手たちの中の一人が、名字を見るなりすぐに近づいてきた。

途端に一歩下がって慌てる彼女の姿を見て、苦手だと言っていた人物はすぐに分かった。



「よう仙道、お前がキャプテンだってな」
「ええ。翔陽はまだ代替わりしないんですね」
「まだ借りを返せてないからなー。お前もその内の一人だけど」


困っている名字のところへ行こうとした時、それよりも早く間に入ったのは藤真だった。
すぐに俺の元へ駆けてきた名字を背に隠しながら、さりげなく仙道と距離を置く。


「やだなぁ、早く引退してくださいよ」
「今日の練習試合で陵南がうちに勝てたら考えてやるよ」
「・・・まいったな」



二人がなにやら火花を散らして話をしてるのを余所に、俺と名字はさっさと自分たちのベンチに戻っていた。

藤真が仙道相手に燃えるのは分かるがもう少し落ち着いたらどうだと、ため息を吐く。それに対して隣にいる名字が肩をびくりとさせたので、気にするなとフォローするのを忘れない。



「・・・ところで、どうして仙道が苦手なんだ?」


ずっと気になっていた事を彼女に聞いてみた。

おどおどした目つきで俺を見上げた名字が今にも泣きそうだったので、無理に聞き出すのも良くないと思い「すまない」と頭をなでれば、意を決した様子で苦手な理由を教えてくれた。


「せ、仙道さん、すごく構ってくるんです。それに、私のこと・・・かわいいとか言って、からかうし。だから・・・苦手、なんです」


ボソボソとそう言って仙道の方をちらりと見た彼女は、目でも合ったのか慌てて視線を元に戻していた。俺がそちらを見やると、ニヤリと嫌な笑みを浮かべている仙道がいて。


「・・・よく分かった。名字、あいつにはなるべく近づくなよ」
「そのつもり、ですっ」


何度も頷く彼女のために、あのツンツン頭の男をいかに近寄らせないようにするか、俺は頭の中でその事ばかり考えていた。



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