俺と彼女はカルガモ親子 | ナノ
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47話 水入らず




「あと何がいるんだっけ」
「テーピン、グ・・・と、コールドスプレーが少ない、かなぁ」


久しぶりの休日、部活の備品を買うために名前と二人でわざわざ駅前に出来たばかりの大型ショッピングセンターまで来ていた。

必要なものを揃えてからは、アイスが食べたいという名前を連れてアイスクリームパーラーで一休みする。


「つーか名前さ、告白されたとかなんで俺に言わなかったんだよ」
「う・・・だって、健司くん絶対、からかう」

(たしかに、絶対からかうけど)


名前が口の端にアイスをつけているのでそれを雑に拭ってやって、軽くデコピンをした。アイスに夢中だった名前は驚いて俺を見たけど、特に気にせずにまた溶けはじめてたアイスの方を向いた。


「頼ってくれないなんて、オニーサマは悲しいぜ」


先日、学校中に広まってた噂について花形に問い質せば、何のことはない名前のドジが原因だと分かり。
落ち着いて考えてみれば名前が付き合う云々なんてまだまだあり得ない話だよなと俺はひとり納得していた。まあ、花形には呆れた視線を向けられたけど、それは解決したからもういいや。


ただ、ならなんで俺に相談しないんだよと悲しいやら詰まらないやらで、こうして名前を買い出しに誘って憂さ晴らししているというワケだった。
そういえば、こうして二人で外に出るのは久しぶりかもしれないな。



暗くなる前に帰るぞと言って、買った荷物と、ついでに名前が持ってた分の備品も持って立ち上がる。
人通りの少ない帰り道を並んで歩きながら、隣の名前に視線をやった。


「それにしてもお前が告白される日が来るなんて・・・月日が経つのは早いな」
「あ、あれは・・・何かの間違いだよ、きっと」
「間違い?」


小さな声でそう言った名前に俺は思わず聞き返す。少し待っていると俯いたまま「私にいいとこなんてないもん」と続けたので、やっぱり馬鹿だなと笑ってやった。


「俺が言うのもなんだけど、名前は可愛いって」
「べ、べつに・・・いいのに・・・ムリして、褒めなくても」


否定しながらも若干赤くなってる耳を俺は満足げに見ていた。


(・・・たまには二人で出掛けるのも悪くないよな)



「ねぇ、健司・・・くん」
「ん?」
「スコアブック、買うの忘れちゃった、かも」


「バカ!もうすぐ練習試合だっつの」


結局もう一度店に引き返す。俺たちほど間抜けな兄妹はいないだろうなと、俺は他人事みたいに考えてた。



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