俺と彼女はカルガモ親子 | ナノ
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知らぬが吉




廊下を歩いていた俺を呼び止めたのは、表面上は笑顔でも目がまったく笑っていない親友だった。


「花形くーん。ちょっと」


やっぱりそう来るかと、ここ数日ずっと藤真の顔色をうかがっていた俺は、聞こえないようにこっそり溜息をついた。



「聞きたいことがある」
「だろうな」


名字がやらかした日の事は、どこから漏れたのか翌日にはある程度学校中に知れ渡っていて、廊下を歩くだけでクラスメイトは疎か下級生にまで真相を聞かれるほどだった。相変わらずこの学校は、噂がまわるのが早い。

そんな訳でもっと早くに藤真の耳に入るんじゃないかと思っていたが、そうでもなかったらしい。



「で、うちの名前ちゃんと付き合ってるって?」
「・・・どうだか」
「俺の知らないうちに何してんだよ」


半眼でじっと睨まれて、俺はどう説明しようかと少しの間黙る。そしてやはり事の始まりから話すべきかと思い口を開きかけた時、後ろからタタタッと駆ける音が聞こえてきて、次に、振り返ろうとした俺の背に軽い衝撃があった。

打った鼻を手で押さえながら「こ、こん、にちは」と涙目で挨拶する名字の姿を見て、無意識に俺の口元は緩む。

まったくタイミングが良いというか、悪いというか。


「ちょうどいいとこに来たな、名前」
「健司、くん?」


俺の体で隠れてた藤真に気付いた彼女は軽く首を傾げた。


「お前本当に花形と付き合ってんの?」
「つ、つ、付き合ってなんか!」
「・・・」


幼い頃から一緒に育ってるだけあって、今の藤真がいつもより怒った様子なのをすぐに感じたんだろう。名字はすぐに反論しながらもしっかりと俺の背に隠れている。
ついでに制服をこれでもかと掴んでいるので、俺は身動きが取れず二人の間でただ突っ立っていた。


「なに俺の前でイチャついてんだよ!」


そうして自分の勘違いに気づかずに憤慨している藤真の姿を見て、彼に憧れや理想を抱いている通りすがりの女子生徒たちは信じられないといった顔をしてこちらを眺めていた。


(・・・いつものクールさはどうした)



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