俺と彼女はカルガモ親子 | ナノ
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何かを変える




翔陽バスケ部は今日も厳しい練習に励んでいた。

インターハイ予選が終わり僕は新キャプテンに選ばれたけど、それはまだまだ名ばかりで練習を仕切るのは相変わらず藤真さんだった。僕はそれがいいと思うし、なにより藤真さんは監督も担ってるワケだから口の出しようがなかったんだけど。

とにかく、冬の選抜に出場出来るのは一校だけ。そのために翔陽は何かを変える必要があると、皆がそう思っていた。



「ウォッス、伊藤」
「あれっ花形さん、メガネ変えたんすか!?」


その日僕が一番乗りでコートにいると、翔陽のスターといわれる花形さんがやって来た。昨日までとは違う形のメガネはかなり厳つく、前までの優しい花形さんの面影は無かった。

(戻してほしい・・・)



「うわっ長谷川さん、ツンツン頭やめちゃったんすか!?」


次にコートに来た長谷川さんはトレードマークのツンツン頭をすっかり坊主に丸めていて、その姿からはどこかのメチャクチャな1年生を思い出した。そう、赤髪のあいつ。

(そういや長谷川さん、昔も坊主だったっけ)



「ウォッス」と言いながら並んで来た高野さんと永野さんは一瞬いつも通りだと思ったけど、よく見ればあることに気が付いた。


「まゆ毛細っ!やめてくださいよ気持ちわるいっすよ!!」


僕がつい正直にそう言うと、二人に一発ずつ殴られた。・・・ひどいと思う。

(何か変えなくちゃいけないつってもさー)


先輩達のちょっとズレてる変え方に僕は内心「違うんじゃ・・・」とは思っても、それはとても口にはできなかった。


「おはよう、ございます、伊藤さん」
「あ、ウォッス名前ちゃん」
「どうかしました、か?」

「あのさ・・・どう思う?先輩たち」


いつの間にか後ろにいたマネージャーの名前ちゃんにそう聞いてみると、「みんな、変わりましたね」と苦笑いをした。
彼女にこんな顔をさせるなんて、まったく先輩たちには困ったものだ。



「あ、藤真さんウォッス・・・ああーっ!!!」


最後に現れた藤真さんが、僕の挨拶に振り返った。
そうして見えてしまった憧れの先輩のあご髭に、僕は息が止まるくらい驚いて。


「そんなの藤真さんじゃないやいっ・・・!」
「ん?」


不思議そうにしてる先輩を置いて、情けない捨て台詞を吐いた僕はとにかくガムシャラに何処かへ走った。




「健司くん・・・それ、私もヤダ」
「そんなに?じゃ、やめるかな」


僕がいなくなった後に名前ちゃんがそう言ってくれたお陰で、次の日には藤真さんは元の爽やかでカッコいい先輩に戻ってた。


(・・・やっぱ先輩たち、色々と間違えてるっす!!)



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