俺と彼女はカルガモ親子 | ナノ
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一件落着




名字が受けている嫌がらせを無くすには、どうするか。その話になった時、藤真がまっすぐに俺を見た。


「花形、俺いい考えがあるんだけど」
「奇遇だな。俺もだ」
「・・・?」


伊達にこの我儘キャプテンのチームメイトをしているワケじゃないから、藤真の考えることは大体分かっているつもりだった。
ニヤリと口角の上がる俺たちを、名字は泣き腫らした目で見上げている。


「今から名前の教室行くから」
「・・・私の?」
「お前は俺たちのそばにいるだけでいい」
「なにする、んですか」


不安げな顔をする彼女の頭を優しく撫でて、出来るだけ安心できるように微笑んでみせた。




「わあっ!藤真先輩と花形先輩が来てる!」
「どうして・・・?」


いきなり現れた俺たちを見て騒ぐ1年の教室。それらに目もくれずに、俺と藤真は座らせた名字の両側で腕を組んで立っていた。

そして藤真が態とらしく咳払いをしたのを合図に、打ち合わせ通りの会話を繰り広げる。


「俺らの大事な後輩を虐めてるっつーのは誰なんだろうな・・・花形?」
「そんな低脳な奴らがこの翔陽にいるなんて考えられないな」
「たぶん男なんじゃねー?嫌がらせなんて品のない事、ここの女子はやんないでしょ」
「ああ。まして俺たちと名字を引き離そうとする輩なんているはずがないだろうな。この学校にはバスケ部を応援してくれるいい奴しかいないから」
「そうそう。バスケ部の大事なマネージャーの誹謗中傷なんて迷惑なこと、まさかやらないよな」
「名字・・・なにも怖がらなくていいんだぞ」
「万が一なんかあったら、すぐに俺たちに言えよな」


俺たちは息もつかずにそう言うと、周囲にいる人間を見渡した。


「そういうワケで、これからも」
「俺たちの大事なマネージャーと」

「「仲良くしてやって(くれよな)(欲しい)」」


俺たちのその大演説は教室にいた人間にしっかりと聞き入れてもらえたらしく、その内容は光の速さで学校中に広がった。
そのお陰で、名字の不愉快な噂と一部女子たちからの嫌がらせや陰口は綺麗さっぱりと無くなった。

その代わりに彼女に何かすればこの学校に居られなくなるという妙な噂が広まっていたが、「むしろ好都合だ」と考えた俺と藤真がそれに干渉することはなかった。



「花形さんっ!」


こうして徐々に元気を取り戻した名字と俺たちは、前と同様に昼休みを過ごせるようになった。



(・・・よかった)



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