俺と彼女はカルガモ親子 | ナノ
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安心した




クラスの女子に聞いた噂のことを俺はすぐに藤真に伝え、そのまま午前の授業そっちのけで屋上にいた。



「ほんと、くだらねー噂だな」


名前が他人に無愛想なのは昔からだぜ、と息巻いている藤真に論点がずれてるとは思ったものの、何も言いはしなかった。



昼休みを告げる鐘が鳴って少しすると、誰かが屋上のドアを開けた気配がした。
誰もいないと思っているのか、俺たちの存在に気づかず俯き加減で適当な場所に腰をおろした。

目配せをした俺たちは立ち上がり、その女子・・・名字に近づく。


「健司くん、花形・・・さん」
「よう。今日はひとりで飯食うの?」
「なぜ俺たちのところに来ないんだ?」


驚く彼女が逃げないようにその両隣に座ると、名字は小さく丸まった。耳を澄ませば「・・・ぐす」とすすり泣いてるのが分かる。



「おら、もう吐け。なんで避けるんだ」
「俺たちのことで何かあったのか」
「うっ・・・」


「バカ名前。俺にも言えないことなのかよ」


俺はそっと頭を撫でて、反対側では藤真が彼女の肩に腕をまわして抱き寄せている。



「名字、お前に避けられるのは・・・正直、辛いんだが」


その一言を皮切りに、名字が俺たちから距離を置いていた理由を話し出した。

一部の女子生徒たちから誹謗中傷を受け、小さな嫌がらせを受けていると。
そして「バスケ部の先輩に近付くのは迷惑」だと言われ、それに対して何も言い返せなかった自分が悔しいと泣きながら話す彼女に、俺は自分の口元が笑っているのに気がついた。


(・・・嫌われたワケじゃなかった)



藤真の方を見ると、こちらもどこか安心したような顔をしていた。



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