俺と彼女はカルガモ親子 | ナノ
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よくない噂




「最近、あの子見ないね」
「あの子?・・・ああ、名字ちゃんだっけ。そういえばいつもお昼に来てたよね」
「もしかして喧嘩でもしたのかな」
「そこんとこ、どうなの?」


「「・・・花形くん?」」


口を揃えてそう言った俺のクラスメイトの女子たちが指しているのは、間違いなく名字のことだろう。

今まさに俺や藤真の悩みの種となっている彼女は、相変わらずこの教室に姿を現す事はなくて。

まあ、部活ではちゃんと顔を合わせているので俺たちは特に何もすることはなかった。

少し寂しくはあったが。


「喧嘩をした覚えはないんだけどな」


英語の参考書をぼうっと眺めてポツリと返事をしながら、ところで何でこいつらはこんなに名字の事を気にかけているんだと少し疑問に思う。

何やら騒ぎたてる彼女たちに視線を向けるとそのうちの一人が何かを思い出した様に口を開いた。


「そういえば・・・この間うちの部活の後輩が名字ちゃんの噂してた、かも」
「どんなだ?」


気になった俺はその噂とやらに耳を傾ける。そして聞き終わる頃には、ずいぶんと眉間が寄っていた。


彼女の話を要約するとつまりだ。

翔陽で人気がある(らしい)バスケ部の中でも特に俺や藤真のことを好いてる女子は多くて、そういうヤツらからすれば、マネージャーでしかも毎日俺たちの近くにいる名字の存在は面白くないと。

そして元々の彼女の非社交性もあいまって『感じが悪く、バスケ部に近すぎる気に食わない女子』に見られているのだと、そんなところだった。


「・・・そうか」
「あくまで噂だけどね。それに、言ってるのは1年の子たちだけじゃないかな」
「名字ちゃん、最近じゃよく笑ってるし感じ悪くないよね・・・可愛いし」
「嫉妬だろうね」


(・・・くだらないな)


人気がありすぎるのも考えものだね。そう言ってぽんと肩に置かれた手が俺には酷く重く感じた。



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