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子ガモの反抗期?
「・・・なあ花形、気付いてるか?」
「・・・ああ」
「やっぱりか」
「気が付かない方がおかしいだろ」
新学期が始まって少しは暑さもマシになっている気はするけど、それにしてはまだまだ元気に鳴いている蝉が多すぎやしないかと、窓の外に見える木を睨みつけた。
「どうも名前の様子がおかしい」
「・・・特にここ数日、だな」
例えば廊下で俺と会ったとして以前なら嬉しそうにして駆け寄って来たところが、最近では戸惑った顔をして引き返してしまったり。部活で話しかければ必要最低限しか会話をせず、目を合わせる事もない。
聞けば藤真も同じような状況らしく、首を傾げていた。こんなことは初めてらしい。
毎日一緒に過ごしていた昼休みも、課題があるとか教師に任された仕事があるだとかで俺たちと共にすることは無くて・・・だとすれば誰と一緒にいるのかが気になるところだった。
いやむしろ、それよりも重要なのは・・・
「薄々思ってたんだが」
「・・・」
「もしかして俺たち、名字に避けられてるんじゃないか」
「・・・」
重い沈黙の中で、俺たちは二人揃って地獄にでも落ちた気分だった。
(・・・まったく、冗談じゃないぞ)