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新学期のはじまり
「今日から俺も一緒に食う」
「そうか」
藤真は、授業の合間に俺の教室まで来るとそれだけを言ってさっさと引き返して行った。
昼休みになると、途中で会ったのか名字の手を引きながら再び俺の教室に現れた。「学食行くぞ」と俺の返事を待たずに歩き出す姿に思わずため息をつく。
「名前さ、クラスに友達とかいないよな?」
「ぅ・・・うん」
だよなー、と名字の頬を指でつつく藤真。隣同士で座る二人の向かいにいる俺は、名字が困り顔で弁当を食べるのをそっと見守っていた。
「やっぱさ、俺らとずっといるのは良くないのかもな」
俺からすれば今更だろうと思わなくもないが、藤真は頬杖をつきながらポツリとそう言って何やら考え込んでいる様だ。
その横で何か言いたそうにしている名字に気づいて、どうした?と聞くと、箸を置いて伏し目がちに口を開いた。
「友達いない、けど・・・花形さんとか健司くんと、離れたく、ない」
「「・・・」」
俺たちはそれを聞いて黙った。正確にはどちらも目を見開いて一瞬固まっていた。
チラチラと不思議そうに見つめてくる名字の頭に手を伸ばすと、彼女はされるがままに撫でられている。
(・・・可愛いやつ)
目が合った俺と藤真はきっと同じことを考えているんだろうなと、長い付き合いのお陰でお互いの事は手に取るように分かっていた。