俺と彼女はカルガモ親子 | ナノ
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バイバイまたね




迷子になった名字を全員で探していると、見覚えのあるやつが俺の前に現れた。


「よう、花形」
「池上・・・悪いが少し急いでるんだ」


挨拶もそこそこに踵を返そうとした俺を「まあ待て」と言って引き止めた池上。


「今よ、お前んとこのマネージャーを保護してるんだ。たしか、名字っつったか?」


その口から出てきたのは、今まさに俺が探している人物の名で。


「・・・名字を?」
「一緒に祭りに来てたんだろ?迷子だって言って泣きそうにしてる」
「何処だ」


名字が半泣きだと聞いて(むしろもう泣いてるんじゃないか?)いてもたってもいられなかった俺は、池上に教えられた公園に急ぐ。
とにかく早く名字を見つけなければとそれだけを考えていた。

(・・・我ながら心配性だな)



俺が公園に着くと、ベンチに座って小さくなっている彼女と、その周りには陵南のバスケ部員が数人いた。
その中にはもちろん魚住がいて、他にも越野や福田、そして何故か名字のすぐ隣に座って頭を撫でている仙道がいた。


「花形、さんっ・・・」


俺を見つけるなりすぐに駆けて来た彼女をなんとか抱きとめる。


「あーあ、逃げられちゃった」
「仙道・・・悪ノリしすぎだぞ」


へらへらと笑う仙道に呆れた様子の越野は、チラッと俺の顔色を伺うと次に腕の中の名字に視線を向けていた。
それを不思議に思いながらも俺は魚住に近付いて礼を言う。少しして俺に追いついた池上にも、遅れながら礼を言った。もちろん、名字も隣で頭を下げていた。


「うちのマネージャーが世話をかけたな」
「たまたま通りかかっただけだ。それより次は気をつけろよ、名字」
「・・・ハイ」


俺の服の裾をこれでもかと握る彼女の姿に魚住は「・・・相変わらずだな」と苦笑いをし、それから他の部員を連れて帰って行った。
去り際こちらに手を振る仙道から死角になるよう慌てて俺の背に隠れる名字に首を傾げるが、当の本人は何も言わなかった。



「なんだよ仙道、ご機嫌だな」
「そうか?」
「・・・そんなに気に入ったのか?あのマネージャーの子」
「はは、まあね」
「見たとこ花形さんにベッタリだったけど?」
「その方が面白いだろ」


(・・・めんどくせー事になんなきゃいいけど。すんません、花形さん)



越野が心の中で俺に合掌していた事なんて、藤真たちを待っている間に始まった花火を名字と眺めていた俺には、知る由もなかった。



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