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俺たちのキャプテン
うちのバスケ部では一部を除き、名字を含むほとんどの部員が期末試験をパスした。
(これだけ人数がいれば、中には補習に引っかかったヤツもいたみたいだけどな)
そうして翔陽高校は夏休みになったが、相変わらずそのほとんどがバスケの練習に費やされていた。
「いまのディフェンスは良かったぞ一志!」
「永野、スクリーンアウトが甘い!」
「おい1年!ぼけっとすんな!やる気あんのか?」
キャプテンは引退したものの監督として、また現役として残っている藤真は相変わらず声を張ってチームを指揮していた。
隣で汗を拭う後輩の伊藤に「いいのか新キャプテン」と笑いかけると、諦めたように頷いている。
「しかし、本来はお前がやらないといけない事だぞ?」
「・・・適材適所だと思ってます。冬の選抜までは先輩たちについて行きたい、ッス」
「・・・そうか」
隣のコートに呼ばれた伊藤は、じゃあと言って1年の指導に向かった。以前より頼もしく見える後輩に自然と頬が緩む。
「何笑ってるんだ、花形?」
いつの間にか近くにいた高野は不思議そうに俺を見ていた。
伊藤に意気込みを聞いていたんだと答えれば、「・・・藤真か」と言って俺と同じように笑った。
「一番張り切ってるもんな」
「当然だろ。あの湘北・陵南戦を観た後だぜ」
「まだまだ伊藤だけには任せてられないんだろうな」
誰よりも強い思いを持つ藤真に、尊敬すら感じている俺たちだった。
「おらそこ何喋ってんだよ!そんなに余裕なら外周してこい!」
「「・・・げっ」」