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取扱説明書ください
「・・・というワケだ」
「どういうワケだ」
「分かってくれよ学年主席」
「分かってたまるか」
たまに出る藤真の暴君ぶりに慣れてるとはいえ、いきなり女の子を連れて来られて「コイツを頼む」っていうのは勝手すぎやしないか。
頼まれている当人の名字はどこを見ているのか、ぽけーっと窓の外を眺めていて口を開く気配はない。
俺は出来るだけ小さくため息をついた。
「つまり、俺の幼馴染なんだけどさ」
「それはもう聞いた」
藤真が隣にいる名字の頭をぽんと撫でる。
「極度の人見知りなんだよ」
「・・・で?」
黙っていた彼女が藤真の制服を掴んで俺の方を見た。それを横目で見ながら、藤真の続きを促す。
「俺以外でも知り合いというか、友達というか・・・理解者的な?そういう奴がいた方がいいだろ?だから一役買ってやろうとだな」
「・・・俺に白羽の矢が立ったのか」
「そういうこと」
やっぱり話が分かるヤツだな花形は!そう言って藤真は豪快に笑うと、半ば無理やり俺と名字を握手させた。そして彼女の手を取って引き返して行く。
後に残された俺は、しばらくそこに佇んだままだった。
(具体的に、俺にどうしろと・・・?)