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兄ガモ離れ?
昔から極度の人見知りで、いつも俺にくっついてた名前。
高校生になってから荒療治としてバスケ部に入れてみたが、これがなかなか上手くいった。
むしろ、上手くいきすぎた。
決勝リーグの試合会場に向かう途中、名前はずっと花形の話をしていた。
(ちょっと前まで・・・俺にべったりだった、のに)
「花形さんっ」
「よう」
「・・・」
観客席に着いて花形の姿を見つけた途端、名前がそっちに走っていった。予想できてたけど、なんだか大事にしてきた妹を取られたような気がして、俺としてはおもしろくない。
(てか、近すぎ・・・くっつきすぎ)
「・・・遅かったな、藤真」
花形の隣にいた長谷川に「ウォッス」と言って俺もゆっくりと近づいた。
コートを見下ろせば、ちょうど陵南が100点目を取ったところで、会場にはどよめきがあった。
「武里が弱いのか・・・陵南が強いのか・・・」
後半残り5分以上を残して仙道・魚住をさげる陵南の余裕とその強さに武里は、為す術もなかった。
(仙道・・・去年のあのルーキーが、ここまでの選手になったか)
「あ、あの人・・・魚住さん、ですよね」
「ああ。陵南のキャプテンなんだ」
「花形さんより大きい人は、初めて見ました」
名前と花形の方をチラチラと気にしながら、俺は勝負のついた試合を眺めていた。
無意識にでた俺のため息は、歓声の中に消えてなくなった。
(・・・なんか、落ち着かない)