( 25/80 )
引退はしません
「・・・湘北に負けて、インターハイへの出場は叶わなかった」
試合の後、控え室のいたる所ですすり泣く声が聞こえていた。すぐ隣にいる名字も、タオルを顔に押し当てて俯いている。
俺や藤真の目にも、涙の痕がまだ残っていた。
「俺たちの代は一応、引退ということになる」
ビクッと肩を強張らせる名字。彼女を見つめる藤真は悲しそうな顔をしていた。
藤真がもっと選手に専念出来ていれば、あの時こうしていれば。色々考えはするが、もしもの話をしても仕方ないと自分に言い聞かせる。
「ただ俺はこのまま・・・牧との勝負を諦めるつもりはない。冬の選抜を目指すつもりだ」
殆んどが受験を控えているから全員がバスケ部に残るわけじゃないのは当然だ。
そして藤真のその言葉に頷いたのは、俺や他のスタメンを含めた何人かだった。
「でもとりあえず、みんな・・・お疲れさん」
藤真は最後にふっ、と笑った。
その表情からは、負けてしまった悔しさと同時に選手兼監督という重責から解放された清々しさも見えた様な、そんな気がした。
(・・・今度こそ打倒海南、そして湘北だ)