俺と彼女はカルガモ親子 | ナノ
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お疲れさまです




湘北に追い上げられて流れが変わってしまっても、健司くんがボールを持てばベンチも会場も今まで以上に盛り上がった。


「花形さんっ!」


桜木くんのリバウンドを健司くんが下から狙うとそれに気付いた桜木くんがボールを守ろうと腕を振って、その肘が後ろの花形さんに当たってしまった。


「花形大丈夫か!伊藤用意しろ!・・・名前、来い!」


驚いて動けなかった私は、健司くんに呼ばれて慌てて救急箱を掴むと倒れた花形さんに駆け寄った。


「これで桜木はファウル4つだ」


花形さんはすぐに体を起こすと、大丈夫だからと言って私の頭を撫でてくれた。いつも通りの様子に気持ちが少しだけ落ち着いた。


「勝って決勝リーグに行くぞ!全力で湘北を倒す!」
「おう!」


私は血が出ていた彼の額を手当てして割れてしまったメガネを受けとると、ベンチに戻ってからもそれをぎゅっと持ったまま、もう一度流れが翔陽に傾くのを見守っていた。



「ファウルしろ花形!フリースローならそいつは入らないっ!」


残り2分を切ったところで桜木くんは、花形さんと永野さんの上から豪快なダンクを決めた。


「「「桜木!桜木!」」」


それはオフェンスファウルになったものの、この日一番の大歓声と拍手が桜木くんに送られた。
そうして、インターハイ予選の5回戦はわずか2点差で湘北の勝ちとなり、健司くんや花形さんの最後の夏が終わった。



「ありがとうございました!」


初めて見た健司くんや花形さんの涙に、遣る瀬無い思いが私の中でこみ上げてきた。



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