俺と彼女はカルガモ親子 | ナノ
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夏の緒戦




「インターハイへ行くのは」
「誰だー?」


翔陽ッ!翔陽ッ!翔陽ッ!


部員数の多い翔陽のバスケ部で、試合に出られる者はほんの僅か。ベンチ入り出来なかった者たちだけで観客席の一角を埋めているため、会場はすでに翔陽コールと熱気に包まれていた。
斯く言う自分も、去年まではあちらで試合を応援していたのだが。



「緒戦だからって油断するなよ。湘北は勢いのあるチームだ」


ジャージを肩で羽織りベンチに座る藤真。その表情は監督そのもので、俺には頼もしさが感じられた。


「さあ気合い入れて行けよ!」


そう言って俺たちスタメンの士気を鼓舞すると、コートに向けて背中を押した。

整列の前にベンチを振り返ると、タイマーとスコアを握りしめてこちらを見守る名字と目が合った。その緊張した様子を見て逆に落ち着いた俺は、ふっと笑うとジャンプボールのサークルに入る。

湘北のジャンパーは無名だが同じ身長で、実力をも備えた赤木だ。相手にとって不足はない。


花形!花形!花形!


会場中に自分の名前が響く中、いよいよ審判がボールを上に高く放った。



「頑張れ、花形さんっ!」


彼女の声援ただひとつが、割れんばかりの歓声の中、不思議と俺の耳に届いた。



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